名護市と政府「パイプ」を誇示 松野官房長官、久辺3区の施設整備要請に「前向きな返事」


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施設について松野博一官房長官(右端)に説明する古波蔵太辺野古区長(中央)=3日、名護市同区の区民集会施設(代表撮影)

 「官房長官としてはおそらく初」と地元関係者が口をそろえる松野博一氏の名護市久辺3区(辺野古、豊原、久志)視察。「(基地建設に伴って得られる)米軍再編交付金などで整備した『はこもの』の確認」(地元関係者)として3日、区長らと面談した。松野氏は施設整備などの要請に「前向きな返事」(宮城直美豊原区長)をしてみせ、政府と3区の「パイプ」を強く印象づけた。

 松野氏は3区訪問の前に、隣接する米軍キャンプ・シュワブも訪問。普天間飛行場移設の工事の様子も視察し「着実に進めるとの決意を新たにした」と強調してみせた。

 近年、来県した閣僚と久辺3区区長の面談は名護市西海岸や本島中南部のホテルなどで行われるのが通例で、閣僚が3区に出向くのは異例だ。3区役員の一人は「本人がここまで来るとは思わなかった」と驚く。

 松野氏が3区で視察した施設は、基地建設に伴う米軍再編交付金などを原資として整備した。交付金は基地建設への協力が条件で、国は辺野古新基地建設に反対した稲嶺進前市政には交付を停止した経緯もある。稲嶺市政下の2015年、国は代替制度を創設し、3区に直接補助金を投下した。松野氏が視察した施設には直接交付の補助金も活用されており、古波蔵太辺野古区長からは制度創設への感謝の言葉があった。

 18年から続く渡具知武豊市政は新基地建設について「県と国の係争の推移を見守る」と繰り返し、国は「黙認」姿勢をとる市政に再編交付金交付を続けている。国は1日、市への14億9千万円の再編交付金交付予定を発表した。1月の名護市長選での渡具知氏再選に対応した格好だ。

 松野氏は3日、渡具知氏と名護市役所で冒頭を除いて非公開で会談した。出席者によると、会談では再編交付金は話題に上がらなかったという。

 半面、公開部分で松野氏は1日に成立した沖縄振興特別措置法に北部振興の努力義務が新設されたことに触れ「法目的の実現のために、名護市をはじめとする地元のみなさまと連携して取り組む」と市との「パイプ」を誇示した。

 官房長官就任以来3度目の来県となった松野氏。宜野湾市や名護市など、基地所在市町村の首長らと意見交換を重ねる一方、新基地建設に反対する玉城デニー知事と会談したのは昨年11月の一度だけだ。

 玉城知事は4日、記者団の取材に「(市町村が)個別具体に面談をして意見交換をするのはかまわないし、そのために県がどうのということはない」と冷静に受け止めた。 (塚崎昇平、長嶺晃太朗)