【深掘り】辺野古不承認取り消し、沖縄県の対抗策は?今後の政治日程


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名護市辺野古の新基地建設現場=2021年11月

 沖縄の日本復帰50年や知事選など大きな政治日程を前に、米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、工事の阻止を目指す県と進展を図る国の対立は新たな局面を迎えた。国は8日にも、新基地建設で軟弱地盤改良工事に伴う沖縄防衛局の設計変更申請を、県が不承認とした処分を取り消す。承認するよう求める勧告を出す構えの国に対し、県側は国地方係争処理委員会での審査申し立てや抗告訴訟など対抗策の検討に入る。

 8日に処分が取り消されれば、来月15日の沖縄の日本復帰50周年式典という大きな政治日程を前に、県が対抗策の決断を迫られる。対抗策の展開によっては、9月11日投開票の知事選前に裁判闘争への移行もありえる。国への対抗策の是非も含め、知事選で辺野古新基地建設問題の争点化は必至な状況だ。

 県が第三者機関の「国地方係争処理委員会」に申し立てる場合、期限は30日以内。同委員会は90日以内に審査して結論を出すことになり、結果が不服な場合の訴訟提起も期限は30日以内となる。この場合、5月の復帰記念式典前に係争委に申し立て、9月の知事選前に訴訟提起に至るスケジュールが見えてくる。

 一方、直接訴訟に至る「抗告訴訟」では6カ月以内が期限で、知事選後も訴訟は可能だ。県は審査請求の結果を受け、法律の専門家なども交えて対抗措置を洗い出す方針だ。

 県の設計変更不承認は昨年11月で、翌12月に沖縄防衛局が国交相に審査請求し、国交省の審理員が双方の主張を聞き取って審査を進めていた。関係者によると、4月上旬には国交省での審査が終了し「近く結果が出る」との観測が県庁内でも広がっていた。

 辺野古新基地建設工事を巡り、国はこれまでも審査請求を対抗策としてとってきた。過去の審査状況から県側は通知まで2週間程度を見込んでおり「年度初めは避けると思っていたが、ここまで早いとは」(県関係者)との受け止めも広がる。

 県が対抗措置をとった場合、県と国の法廷闘争に発展する公算が大きい。県側は審査請求で不承認が取り消される展開も想定しており、対応の準備は進めてきた。別の県幹部は「まずは(国の取消処分の)内容をみてからだ」と冷静に語った。 (塚崎昇平)