【識者談話】辺野古設計変更の不承認、取り消しでどうなる?(本田博利・元愛媛大教授)


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 国土交通相が沖縄防衛局の審査請求を受け、県の辺野古新基地建設に伴う軟弱地盤改良工事の設計変更不承認を裁決で取り消した。国は県の不承認を取り消しても、元の状態に戻るだけで、軟弱地盤改良工事に着手できない状況は変わらない。

 県は不承認の根拠として、環境への影響や軟弱地盤などの調査不足を挙げる。国は県の指摘に応じ、調査データを強化して再申請するのが本来の対応だ。

 国はそれをせずに強制力のある「是正の指示」で対抗するとみられ、舞台はまず公正なレフェリーである国地方係争処理委員会に移る。是正の指示は、新基地建設に伴うサンゴ移植を巡って国が県に是正指示を出し、適法性が裁判で争われた。

 2021年7月の最高裁判決では適法となったが、判事5人が3対2に別れ、辛うじて国の主張が認められたにすぎない。反対意見を出した判事は「変更承認申請が拒否されれば、サンゴ移植も無駄になる」と指摘しており、県民も多くの励ましを受けた。

 是正の指示が裁判所で認められても、県が従わなければ「代執行訴訟」に進むしかなくなる。国の大臣が知事に代わって設計変更を承認する方式だ。地方分権下で国と地方の根本的な関係のあり方が問われ、全国の自治体の反発は避けられない。長期間が想定される裁判の決着が付くまで、国は地盤改良工事に着手できないことになる。

 辺野古新基地建設を巡る県と国の裁判で確定した8件は和解か県の敗訴となっているが、最高裁の諸判決は学説批判や見直しで変わりうるものだ。新基地建設阻止を掲げる県は、遺骨混じりの土砂を使わせないことや、関連工事の阻止など毅然(きぜん)とした「法律闘争」も必要となる。 

(行政法)