沖縄県名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立て事業は、大浦湾側に広がる軟弱地盤を改良しなければ完成が見込めない状況が生じている。地盤改良工事に必要な設計変更を提出した沖縄防衛局に対し、県は工法や安全性の根拠など改良工事の実現可能性に疑問符を付けたほか、本来の目的である米軍普天間飛行場の危険性除去が大幅に遅れる点などを指摘し、双方の主張の対立が続いてきた。
行政不服審査法に基づく国土交通相の8日の裁決は、いずれも防衛局側の主張を認め、県の反論を否定した形となった。一方で、私人の権利救済を目的とする行政不服審査制度を国の機関である沖縄防衛局が利用することや、内閣の一員同士による手続きで県の行政処分を取り消す決定を乱発していることに対しては、行政法の識者らによる批判が根強くある。
防衛局が提出した設計変更を巡り、県側は軟弱地盤の改良工事で用いる工法について「規模的に前例がない大規模な地盤改良工事」とし、普天間飛行場の危険性早期除去など埋め立ての目的達成について「合理性がない」と主張した。
これに対し国交相は裁決で、羽田空港拡張工事などの事例を挙げた防衛局側の主張を認め、「前例がないとは言えず、技術的に確実性が認められないということはできない」と退けた。
県側はジュゴンについて「工事の影響について適切な情報が収集されていない」など環境面の影響や不備を指摘したが、裁決は「環境保全や災害防止の要件に適合する」と防衛局の環境対応を追認した。
県側は、当初の埋め立て承認申請の際に想定されていなかった軟弱地盤の存在などを挙げ、国が「唯一の解決策」としてきた辺野古移設による普天間飛行場の返還について「不確実性があり、危険性の早期除去につながらない」と指摘してきた。
これに対しても裁決は、墜落事故や周囲の騒音被害など現状の普天間飛行場の危険性を挙げて、防衛局側の主張をくみ「埋め立ての必要性が合理性を欠くとすることはできない」とした。
(塚崎昇平)