【深掘り】4カ月での裁決…国は工事へ前のめりの姿勢 「承認勧告」に沖縄県の対応は 辺野古不承認取り消し


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名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部=3月17日、航空機より撮影

 名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄防衛局の設計変更申請を不承認とした県の行政処分について、国土交通相が処分を取り消す裁決を決定した。裁決とともに、設計変更を承認するよう県に求める勧告も突きつけた。一方で、内閣の一員同士による行政不服審査手続きには「身内」批判がつきまとい、県は裁決を不服として対抗措置に出る構えだ。沖縄が日本に復帰して50年の節目となる5月15日を前に、辺野古新基地建設を巡る県と国の隔たりはより深まりつつある。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設問題は、沖縄防衛局の設計変更申請を不承認とした玉城デニー知事の行政処分を国土交通相が取り消す裁決を出し、県と国の対立は新たな段階に入った。県側は、国交相の判断や時期を「想定通り」と受け止め対抗策の検討を開始するが、今月20日までに設計変更を承認するよう迫られた「勧告」期限への対応が焦点となる。
 

4カ月で裁決

 沖縄防衛局が使った行政不服審査請求は本来、私人の権利や利益を救済するための制度だが、政府は辺野古新基地建設を巡って、これまでも繰り返し制度を利用してきた。翁長雄志前県政で実施した埋め立て承認の撤回時には審査に半年以上かかったものの、今回は約4カ月で裁決に至っており、前のめりを強める国の姿勢が鮮明となる。

 内閣の構成員同士による不服審査の手続きについても「結論は決まっていた」との批判が上がるが、政府関係者は「裁判ですぐに裁決をひっくり返されても困るので法的な論点は十分に詰めたはずだ」と正当性を主張する。

 国交相の裁決に防衛省関係者は「当然、認められるべきものと自信を持っていた」と語り、「法治国家なので行政機関として適切に対応することを(県に)期待する」と余裕を見せた。
 

「復帰の日」前の攻防

 県がとることができる対抗手段は、国地方係争処理員会への審査申し立てか裁判所での抗告訴訟に限られている。県庁内では20日の期限が設定された勧告への対応をとらず、国が「是正指示」に踏み込んだ場合に、是正指示の違法性を問う裁判などに移行する案も出ている。

 だが、「勧告を無視すると、違法状態を認め、法廷闘争でリスクも伴う」(県関係者)との見方も上がり、国地方係争処理委員会への審査申し立てに進む可能性が高いと見られている。

 玉城知事ら県三役は8日、今後のシミュレーションについて担当部局から説明を受けたほか、弁護士とも意見交換したという。県に設計変更の承認を迫った勧告の期限について、県幹部は「(沖縄が日本に復帰した)5月15日は、穏やかにすませたいのは国も県も一緒だ。その前に方向付けするという政治的な判断があるのではないか」との見方を示した。

 ただ、4月30日には与党4会派による「県民大会」が開かれるのを皮切りに、5月15日にかけて、基地問題をはじめとする沖縄の不条理を全国に訴えようとする政治的な機運は一気に高まる。

 ある県関係者は「(国が強硬姿勢を示したことで)県民大会に向けた意義づけになるかもしれない」と強調した。

 (明真南斗、梅田正覚、塚崎昇平)