野村流工工四の初版本寄贈へ 湛水流・蔵本さんが保管 沖縄県立図書館に


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寄贈される「声楽譜付 工工四」の初版本

 野村流の伊差川世瑞(せいずい)と世禮(せれい)國男が発刊した「声楽譜付 工工四」の初版本全4巻(上、中、下、続巻)が近く、県立図書館に寄贈される。同書上巻の発刊は1935年で、県立図書館にも所蔵されていない。伊差川、世禮両者に師事した蔵本繁雄さん(1903―2007年)の四男新さん(74)=うるま市=が保管していた。

 繁雄さんは、県指定無形文化財「沖縄伝統音楽湛水流」保持者で、琉球古典音楽湛水流保存会の会長も長く務めた。元教員でもあり、1928年に平安座小学校に赴任した際に、世禮の長女の担任を務めた縁で、親交を深め、同書を世禮から直接受け取った。

 世禮から同工工四を受け取った繁雄さんは、36年の春休みと夏休みに、同書を教科書に、伊差川から直接指導を受けた。夏は3週間、朝9時から夕方まで、猛暑の中にうちわ1本で稽古をした。寄贈される「声楽譜付 工工四」には、伊差川との稽古で指摘された声楽譜の誤りを訂正する記述も見られ、繁雄さんが真剣に楽典と向き合った様子がうかがえる。

蔵本 繁雄さん

 「声楽譜付 工工四」は36年に中巻を発刊し、伊差川が37年に急逝したため、下巻(37年)と続刊(41年)は、伊差川とまとめた生前の原稿を元に、世禮一人で発刊した。下巻に世禮が記した「謹呈 蔵本繁雄様 世禮生」の文字からは、出版に至った喜びがにじみ出ている。

 新さんは「後の世まで保管してもらい、関心のある人にぜひ見てもらいたい」と話し、同書が古典音楽の発展につながるよう期待した。
 (藤村謙吾)