沖縄市は米空軍嘉手納基地など重い基地負担を背負ってきた。一方、嘉手納より南の米軍基地の返還・統合計画では、米軍牧港補給地区の倉庫群やキャンプ瑞慶覧のスクールバス関連施設が、米軍嘉手納弾薬庫知花地区に移転する。移設先の市北部は嘉手納基地の騒音が激しい地域。住民の負担増が指摘される中、その対応策も争点だ。
倉庫群移設に伴い、牧港補給地区は129ヘクタール返還される。桑江朝千夫市長は「牧港補給地区の返還で県全体の発展につながる」とし、2016年に受け入れを表明した。
市は移設に伴う課題を解決する場の設置に加え、市経済の起爆剤と位置付ける沖縄アリーナの整備など、地域振興への協力を国に要請。アリーナは防衛省や内閣府の予算を投じ、昨年完成にこぎ着けた。市は移設に伴う周辺の渋滞対策、河川の氾濫防止、ごみ問題などの解決を国と協議してきた。河川の氾濫では基地内を通る比謝川の管理強化に向け、17年に日米が共同使用で合意した。
嘉手納基地は常駐機に加え、外来機の騒音も絶えない。ことし2月には米アラスカ州から飛来したF35戦闘機12機が約5週間滞在。17年にも12機のF35が約半年にわたり暫定配備された。1月に提訴された第4次嘉手納爆音訴訟で市内の原告は5779人に上り、第1次訴訟の54倍に増えた。
再選を目指す桑江朝千夫氏(66)は倉庫群移設への対応について「利水、治水、交通問題、環境への影響について移設協議会等を活用し、国や県などと緊密に連携を図りながら諸問題の解決に取り組む」と説明する。
嘉手納基地の騒音問題には「三連協(沖縄市、嘉手納町、北谷町)で声を一つにし、外来機の訓練を抑制し、飛行ルートを守るよう求めていく。国には防音工事などの対象地域を広げてもらいたい」と訴える。
新人の森山政和氏(73)は倉庫群移設への対応について「この地域は農地として返還されるべきだった。基地強化につながる施設は認められない。移設には市議時代から反対してきた。住民生活に影響が及ぶことは許されず、地域の懸念や市民生活への影響を注視していく」とする。
嘉手納基地の騒音問題には「軍用機の飛行ルートや飛行可能な時間帯など、具体的な運用規定や外来機の機数制限などを盛り込んだ基地使用協定求めていく」とする。
(’22沖縄市長選取材班)