夫婦別姓、広がる議論 県・17市町村議会で継続 陳情団体「地域の問題として」


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北谷町議会総務財政常任委員会に出席し、選択的夫婦別姓制度の説明をする(右から)眞鶴さやかさん、砂川智江さん=3月11日、北谷町

 結婚時に夫婦が同姓になるか別姓でいるかを選べるようにする「選択的夫婦別姓制度」を巡り、県内の市町村議会で議論が広がりつつある。市民団体が今年1月までに、既に意見書が可決されているうるま市を除く40市町村議会に陳情を提出。3月に宮古島市と読谷村の議会が法制化を国に求める意見書を可決した。県議会と17市町村議会で継続審査や協議中となっており、議論の行方が注目される。

 「困っている人はたくさんいる。ぜひ現状を知っていただきたい」。3月、北谷町議会総務財政常任委員会で、眞鶴さやかさん(36)=うるま市=が訴えた。眞鶴さんは陳情を出した「選択的夫婦別姓・陳情アクション沖縄」の共同代表を務める。同じく、共同代表の砂川智江さん(44)=沖縄市=らと委員会に出席し、法制化の必要性を語った。

 意見書は2019年10月、うるま市議会で県内で初めて可決された。眞鶴さんが市議会に請願し、全会派に丁寧に説明したことが実を結んだ。20年12月、眞鶴さんと砂川さんが中心となり、団体を発足。同会は昨年6月、県議会に請願書を提出した。さらに昨年11月に那覇市議会に、今年1月に残りの39市町村議会に陳情した。

 2~3月、豊見城市、沖縄市、北谷町、名護市の4市町議会で参考人招致を受け、制度の意義を訴えた。眞鶴さんは子どもの姓や戸籍などについてさまざまな質問を受けたと振り返り「いろいろ聞いてもらえてうれしかった。当事者だけでなく支援者の輪も広がってほしい」と前向きに話す。

 3月に宮古島市、読谷村の2市村議会で国への意見書が全会一致で可決された。一方、石垣市や西原町、北中城村など21市町村議会は議員への配布にとどまった。県と17市町村議会が継続審査、協議中などとしている。

 砂川さんは「別姓が選べないのは、生活上の困りごと」と話す。事実婚では緊急時の医療同意や承諾ができないこともある。配偶者控除が適用外となったり、どちらかが亡くなった場合の相続ができなかったりと、不利益を被る。

「結婚相手の考えを尊重するために必要な制度。地域の問題として考えてほしい」と理解を求めた。
 (前森智香子)