〈103〉離島のかかりつけ医 全てを相談できる存在


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 2018年4月より専門医制度が改定され「総合診療」という領域が追加されました。私は新専門医制度の総合診療医の第1期生にあたります。総合診療医は病棟総合医と家庭医に分かれ、私は家庭医療専門医を目指しています。

 家庭医とは年齢や病気を問わず、予防医療、さまざまな臓器の複合した問題や、心理社会的問題などを含めて、家族との関係性も重視しつつ、包括的に対応できる医師と定義されています。

 また、地域全体を診るという視点からは、地域の介護・福祉などと連携して、最適なサービスを提供していく能力も重要とされています。

 診療所医師(以下、島医者)は島に1人しかいないため、良くも悪くも患者や地域と密接に関わることになります。つまり、島民にとっての「家庭医」となります。また、島医者は「医師」であり、「島民」であり、時には「家族」のような立場になることもあります。

 自分に何か問題が起きた時、医学的知識がない人にとってはどの病院に行ったらいいのか迷う時があるかもしれません。そんな時に「まず、あの先生に相談してみよう」となる医師のことを「かかりつけ医」と呼びます。「かかりつけ医」=「家庭医」=「島医者」となるのです。

 昨今、大きな病院を受診する際には紹介状がないと受診することができない制度となっていますが、これには理由があります。

 例えば腹痛がある時、何科に行けばいいのでしょうか? 腸炎、膵(すい)炎、虫垂炎、異所性妊娠、帯状疱疹(ほうしん)など原因はさまざまで、実はこれらは全て違う診療科に分かれます。 

 腸炎は内科で外来治療、膵炎は内科で入院治療、虫垂炎は外科で手術が必要、異所性妊娠は産婦人科の緊急な病気、帯状疱疹は皮膚科で内服治療が必要です。重症度や緊急性を適切に判断し、治療を行ったり、専門医や入院へとつなげたりするのは「かかりつけ医」の役割となります。

 みなさんが自分の信頼できる「かかりつけ医」を持ち、継続的に通うことで、自分のことはもちろん、家族のことまで相談できるようになります。ゆりかごから墓場まで一生付き合っていける「かかりつけ医」を探してみてください。

(菊池徹哉、元南大東診療所、都内医療機関勤務 総合診療科 家庭医)