沖縄の日本復帰50年に関する決議が衆院沖縄北方対策特別委員会で、賛成多数で可決された。決議は、全会一致での可決を目指して与野党間で調整が進められたが、「日米地位協定」の記述を巡って自民党と共産党との折り合いがつかず、与野党の足並みは揃わなかった。自民党が素案作りを主導する衆院本会議での議決でも両党のさや当てが続く情勢だ。
「この内容で賛成できるはずがない」。決議に関する調整が大詰めを迎えていた19日、ある共産党の議員はこう語気を強めた。議員が指摘したのは決議の素案の「日米地位協定」に関する部分。
立憲民主党が取りまとめた当初案では、「見直しを早急に検討」とされていたが、自民側は「あるべき姿を不断に追求する」との従来の政府見解に沿う表現に差し替えるよう求めた。日米地位協定を巡る自民と共産の立場の違いが鮮明になった形だ。
立民も昨年の衆院選での公約で「日米地位協定の改定」を打ち出しているが、決議の全会一致を目指す立場から最終案では文言自体を削除した。同党議員は「難しい課題で、復帰50年の決議にはそぐわないと判断した」と吐露した。
一方で、「米軍施設・区域の整理縮小」「早期返還の実現」が入ったことには満足感を示し、別の野党議員も、「日米地位協定は政党の立場が分かれるデリケートな問題だ。決議から外すのは仕方がない側面もある」と最終案の内容に理解を示していた。
日米地位協定に関する衆院での決議を巡っては、1997年11月の沖北委の決議、2001年7月の外務委員会の決議、02年3月の沖北委での沖縄振興特別措置法の施行に伴う付帯決議でそれぞれ触れられている。
ただ、97年の決議は、95年9月に発生した米兵による少女暴行事件を受けた96年の「SACO合意」の流れの中で行われた。01年の決議も、同年6月に北谷町で発生した女性暴行事件を受けてのもので、ある野党議員は「世論の高まりがないと、日米地位協定の見直しに踏み込む決議は難しい」と漏らす。
衆院では本会議でも「復帰50年」に関する決議が採決される見通しだが、21日までに示された素案には「事件、事故の防止を含む米軍基地の負担軽減」が盛り込まれたのみで、日米地位協定についての記述はなかった。決議を巡る与野党の駆け引きは、日米地位協定の見直しの「ハードルの高さ」を図らずも浮き彫りにした形だ。
(安里洋輔)