自衛隊に感謝、那覇市議会が決議に至った背景は? 議員39人中15人が退席、違和感も


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 那覇市議会が可決した自衛隊などの任務に対する感謝決議を巡っては、多くの議員が自衛隊の活動を評価した一方、「決議」として議会の意思を示すことに対しては与野党問わず、違和感を示す議員の退席が相次いだ。議長を除いた議員39人のうち15人が退席、2人が反対、20人が賛成した末の可決だった。賛成した保守系議員からは「決議の重さを示す点からは、全会一致が望ましかった」との声も漏れた。

 自衛隊の任務に関する感謝決議は、離島からの緊急患者空輸が「1万人」を超えた2020年3月にも自民側により議会運営委員会に提案されたが、意見の一致をみなかったことなどから本会議への提案は見送られた。今回の提案は患者空輸が「1万件」を超えたことを受けたもので、いずれの決議も自民党で元航空自衛官の大山孝夫議員が中心的な役割を担った。

 今回の感謝決議案で自民側は当初、「自衛隊の緊急患者空輸等1万件の任務完遂に関する感謝決議案」を提案し、宛先に陸自第15旅団長などを明記した。しかし、自衛隊が前面に出ることへの反発が一部会派から上がり、最終的にはタイトルから自衛隊を省き、本文に海上保安庁やドクターヘリの取り組み、自衛隊による不発弾処理などを盛り込み、宛先は削った。

 今回の決議には自民と保守系無所属議員のほか、安全保障政策で政府に厳しい立場を取ることが多い共産党も賛成に回った。古堅茂治団長は、賛成理由について、決議はあくまで民生に限った内容だとし「1万人の命が救われており、災害と一緒だ。離島地域が多く、医療が不十分な中で役割を果たしたことに感謝をするのは当然のことだ」と強調した。

 一方、退席した議員の一人は「自衛隊への感謝に異論はない。ただコロナ禍の中、なぜ自衛隊や海上保安庁だけに感謝決議するのか。自衛隊のプロパガンダに利用される恐れもある」と懸念した。

 全国的に「感謝決議」は、東日本大震災のような大規模災害が発生した地域で自衛隊を含む消防、警察など支援に携わった関係機関に向けて出される場合が多い。
 (吉田健一、知念征尚)


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