【記者解説】国交相裁決、判断を避ける 揺らぎかねない司法への信頼 辺野古市民訴訟判決


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辺野古市民訴訟の判決が言い渡された那覇地裁の法廷=26日午後(代表撮影)

 名護市辺野古の新基地建設を巡る辺野古周辺住民による訴訟で、26日の那覇地裁判決は、原告としての資格がないとして訴えを入り口で退けた。軟弱地盤などの問題を受け、県の埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相裁決に問題がなかったのかどうか、司法はまたしても正面からの判断を避けた格好だ。

 国などによる処分の適法性を争う行政訴訟は、原告として認められるまでのハードルが高い。今回の原告4人は、那覇地裁が2020年3月に出した執行停止についての決定で原告適格が認められていた。人事異動もあって3人の裁判官が全員交代し、一転して原告適格を認めなかったが、なぜ異なる判断となったかの説明はない。属人的な判断ではないかとの疑問も生じる。

 26日の判決は、埋め立て予定海域の軟弱地盤や活断層の問題は、国交相裁決が違法だという理由になり得ると認めた。一方で、裁決そのものに問題がなかったのかどうか具体的な判断は示していない。県が国を相手に起こした同種の訴訟でも裁決の適法性の判断はされておらず、疑問は残ったままだ。実質審理に入らず門前払いを続けると、司法の信頼は揺らぎかねない。
 (前森智香子)