「牛はわが子と同じ」 大会での勝利や無事を祈る 安藤淳子さん<闘牛語やびら 復帰50年記念大会・全島大会>2


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
愛牛の宝主成号と並ぶさん=8日、うるま市の石川多目的ドーム前

 8連勝中の宝主成号(ほうしゅせいごう)の牛主、安藤淳子さん(65)は独自の決まり事を持っている。大会前はお寺を巡って願掛けし、大会本番は車中で愛牛の勝利や無事を祈るのみ。生で観戦したことはない。「心臓がばくばくして見てられない」。手塩にかけて育てた牛が闘う姿に耐えられないのだ。なぜ牛主になったのか、「自分でもよく分からない」と笑う。

 父の山田義得さんが牛主だったため、幼少の頃から闘牛が身近にあった。当時から生では観戦はしなかった。うるま市川崎の自宅近くにある安慶名闘牛場から、途切れ途切れに流れてくるアナウンスを聞いて応援していた。闘牛好きは変わらず、愛知県の夫に嫁いだ後も沖縄に来ると、頻繁に牛舎を訪れ、闘牛場で別の牛の対戦を見ていた。

 転機は2012年だ。「顔が好み」という理由で追いかけていた名牛、不動心の子牛を飼わないかとの打診を受けた。巡り合わせだと感じ、牛主になること決めた。以降は、夫と住む愛知県と沖縄県を半月ごとに行き来する生活になった。

 牛舎は常に清潔だ。道具は破損すればすぐに取り変える。「子どものようにたくさん甘やかし、じっくり育てる」という。牛の表情などからその時々の気持ちが分かってくるという。「牛はわが子と同じ。愛情をかけて成長を待ち、可能性を信じる」。牛主としてやりがいを感じている。

 宝主成号はお坊さんにつけてもらった縁起の良い名前だ。安藤さんは大会前は3カ所のお寺へお参りするほか、大会後はお礼参りも忘れない。「牛との出会いからたくさんのことを学ばせてもらった」。全島闘牛大会へ向けて「お互いに致命的なけがだけはしてほしくない。そうすればもし負けても次がある」と愛牛を送りだすつもりだ。(古川峻)


 7日に県復帰50周年記念大闘牛大会、8日に全島闘牛大会がうるま市の石川多目的ドームで開催される。