教員「高校生には人気職」なのになぜ不足?教育学部の受験数に大幅減なく 沖縄県内大学の現状


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 4月、各学校で新学期がスタートしたが、県内では学級担任が28人不足し、理科など専門科目の担当教師を合わせると64人が未配置だった(13日時点)。教員免許を持ちながらも教員採用試験に合格していない人を臨時採用して補ってきたが、それも追い付かない。近年、県内外で教員志願者の減少が指摘されているが、県内の大学を取材すると「高校生にはまだ人気」という側面が見えた。大学教員らが懸念しているのは、働き方改革が進まない教育現場で思い知る「理想と現実のギャップ」による離職や休職だ。(嘉数陽)

 

琉球大 「高校生には人気職」 受験数、大幅減見られず
 

 県内で最も受験者数が多い琉球大学。大学ホームページで公表されている2013~21年度入試の教育学部志願倍率をみると、13年度は4・6倍、21年度が3・2倍で、8年間で1・4ポイント低下している。しかし同学部入学試験委員会の廣瀬等委員長は、実際の受験者数の推移データを示し、「少なくとも高校生段階で教育学部の人気が下降の一途をたどっているわけではない」と説明する。

 琉球大学教育学部の受験者数をみると、18年度実施の入試までは減少傾向にあるが、その後2年間増加し、20年度実施の入試では370人が受験した。21年度実施の入試では73人減少したものの、大学は新型コロナの影響と分析している。その根拠として、志願者の出身地の内訳を挙げた。

 20年度実施の志願者数は県内235人、県外208人(計443人)だったのに対し、21年度実施の志願者数は県内230人、県外148人(計378人)で、県外の志願者数が60人減少した。「県外の受験生が県外受験を控えた可能性がある」と判断し、特段、教育学部の人気が落ちているとは考えていない。

 廣瀬委員長は「さまざまな形で行われる小中高の児童生徒を対象とする『なりたい職業』調査においても、学校教員は必ずランクインしている」と強調。その上で、教育学部に入学しながら卒業後に学校教員を選択しない学生の多くが「働き方への不安」を挙げていると指摘。大学では学生に、教員のやりがいや魅力を伝えると同時に、国や県による学校教員の働き方改革が必要だと訴えた。

 

沖縄大・名桜大 許取得は水準維持 現場で離職、休職を懸念

 「大学には高い志を持って入学してくる。高校生、大学生で教員志願者が激減しているとは感じていない」。そう口をそろえるのは、小学校教諭や中高の社会系の教員免許などが取得できる沖縄大学と、中高の保健体育や養護教諭免許などが取得できる名桜大学の担当者。どちらも毎年の教員免許取得者数は、多少の増減はあるものの一定水準で推移している。

 懸念しているのは「実際に教育現場に入ってからの休職と離職」。厳しい労働環境でも頑張りたいと希望を持って教師になるが、その後「つらい」と胸中を打ち明ける卒業生が多いという。「現場の働き方改革が進まなければ、教師不足は解消されないだろう」と指摘する。

 沖縄大学教職支援センター長の嘉数健悟さんは「むしろ年々、絶対教師になりたいと強い気持ちを持つ入学生が増えているように感じる」と話す。2年生から採用試験の対策講座を受験する学生もいて、教員免許取得者数も毎年100人前後で「特に減っているという実感はない」。

 ただ、免許を取得しても卒業時に教員を選ばない学生は「じわりと増えている」。教員になった卒業生から「部活指導などで時間が取られ、子どもと向き合う時間が短くなってしまう」などと悩みを打ち明けられることもある。

 体育教師になることを夢見ている4年の外間唯奈さん(21)は「過酷だという話はよく聞いている。それでも憧れの職業で、夢をかなえたい」と目を輝かせるが、その横で嘉数さんは「働く現場の環境改善を急いでほしい」と心配そうに話した。

 名桜大学でも免許取得者数は100人前後で推移している。体育教師を目指す人が受験するスポーツ健康学科も、受験者数に大きな減少はない。

 学科長の高瀬幸一教授は「理想と現実のギャップに落ち込む教員が現場を離れ、教員不足につながっているのでは」と話す。「学生は夢にあふれている。過酷な状況があることを説明しても憧れの職業だからと頑張る。送り出す側としては少し複雑で心配だ」

 名桜大でも沖縄大と同じく、卒業時に教師にならない人が増えつつあるという。「県内はまだ、教師に憧れている学生が多い方だと思う。でも、もう限界が近いのではないか。教員採用試験の受験者は減っている。最低合格点も低くなっている。教育の質の低下も懸念される」。教育現場の改革は急務だと強調した。