2014年11月、当時20代の平田ひとみさん(31)=宜野座村=の元に知人から一枚の写真が届いた。ピンク色の鼻をした赤毛の生まれたての子牛が牛舎隅にちょこんと座っていた。「え、何このブタは。かわいい…」。一目ぼれだった。誰にも奪われないようにと、牧場主にすぐさま直談判し、乳をあげる母牛ごと、牛舎に連れ帰った。今や、押しも押されもせぬ人気と実力を兼ね備える「新力Baby」との出会いの瞬間だった。
二十歳の頃、働いていた居酒屋は闘牛関係者の集まりの場だった。そこで夫となる繁殖農家で牛カラヤーの力さん(31)と出会った。デートの場所は闘牛場。懸命に戦う牛たちの姿を見て「どの牛もなんてかわいいんだろう」。すぐに闘牛のとりことなった。おのずと世話も手伝うようになった。
闘牛に囲まれる中で、自身も牛主になりたいとの思いが高まり、ピークに達していた頃、Babyの写真が送られてきた。戦歴から色付きの牛を敬遠する牛主が多いということは聞いていた。それでも「宝石もバッグも指輪も何もいらないから、とにかくこの子が欲しい」。強い思いを譲ることはできなかった。
その後、Babyはひとみさんの愛情を一身に受け、すくすくと成長。「かわいいブタ」は現在、950キロもある闘牛へと変貌を遂げた。「どこよりも3倍は稽古させている」という力さんの言葉を体現するように、2020年2月にデビューすると破竹の勢いで5連勝中だ。
全島大会にも劣らない、実力牛が名を連ねる県復帰50年大会の出場牛に選ばれた。「全国からも注目される試合なので、出られるだけでもうれしい」とひとみさん。牛舎で草をうれしそうに食べている愛牛に向かって「いつも通り頑張ってね」と声を掛けた。
(新垣若菜)
7日に県復帰50周年記念大闘牛大会、8日に全島闘牛大会がうるま市の石川多目的ドームで開催される。