ブラジル出身の県系4世で、サンパウロ州立大学ポスドク研究員として水問題を研究しているヴィクトル金城さん(37)が、沖縄の水質汚染を調べるために3月から来沖している。県内の河川などでPFAS(有機フッ素化合物)の検出が相次ぎ、原因究明や対策が進んでいないことを疑問視し「水は社会を映し出す鏡だ。沖縄の声を聞き、施策に反映するべきだ」と訴えた。
金城さんはこれまで、サンパウロ市内を流れる河川の浄化や再生に関する研究をしてきた。
来沖後はPFASが検出された比謝川や宜野湾市内の湧き水などを視察。いずれも嘉手納基地や普天間飛行場などの周辺にあり、米軍基地が由来とみられている場所だ。県は基地への立ち入り調査を求めているが実現せず、原因究明すらできない状況が続いている。
木々に囲まれ長い歴史を感じさせる石造りで、地域の生活に密接に関わってきた宜野湾市内の湧き水。その前に立てられた「飲めません」などと記された看板を見て「苦しいのは、どうやったら回復できるのかが見えないことだ。なぜ飲めないのか、説明を添えるべきだ」。ルーツである沖縄で水質汚染が広がることに心を痛める。
水源は世界各地で信仰の対象などとして大切にされてきた。一方、金城さんの地元ブラジルでも、鉱山から排出された有毒物質を含む水をためていたダムが2015年と19年に決壊し、先住民族が暮らす地域を含む広範囲が汚染された。世界各地で水質汚染が人々の命を脅かす問題として注目を集めている。
ブラジル人であると同時に、先住民族としてのうちなーんちゅというアイデンティティーを持っていると語る金城さん。「世界に何億人といる先住民族にとって、湧き水は身近で、大切なものだ。水の大切さを知る人たちの声を聞くことで、持続可能な社会は実現できる」と強調した。
(知念征尚)