民主主義の変容に危機感 作家・柳広司さんが憲法講演会で講演 きょう午後1時半から 那覇市「なはーと」


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沖縄への思いを語る小説家の柳広司さん=2日午後、那覇市の沖縄合同法律事務所

 沖縄県憲法普及協議会などが主催する憲法講演会「沖縄からの風―南風に乗るのは誰か?―」が憲法記念日の3日午後1時半から、那覇市の那覇文化芸術劇場なはーとで開かれる。講師として招かれた小説家の柳広司さん(54)は、戦後の沖縄を舞台とした小説「南風(まぜ)に乗る」を週刊ポストで連載中だ。沖縄への思いなどを聞いた。 (聞き手 前森智香子)

 ―沖縄とのつながりは。

 「沖縄の復帰は4歳の時で直接の記憶はない。1995年の少女暴行事件で強く意識した。その時に沖縄を巡る状況は変わると思ったが変わらず、ずっと残念な思いを持っていた。2019年の辺野古(米軍基地)建設についての県民投票で、政府に結果を突きつけた。それを平然と無視するのは、自分が知っている民主主義ではないのではと思った」

 ―辺野古のゲート前で座り込みをしたことも。

 「小説家は何事も自分で経験しないといけない。機動隊員に両脇を抱えられて、足をブロックされた。一緒に行った妻には『今の日本はどういうことなのか見ておいて』と、道路の反対側にいてもらった」

 ―講演依頼を受けた理由は。

 「2001年にデビューして20年余りだが、講演依頼は全て断ってきた。今回が初めての講演になる。19年の県民投票後、有志を募り、辺野古の工事中断と対話を求める声明を発表した。このままスルーしたら、自分が信じている戦後民主主義は別の形に変容してしまうと思った。今回は逃げられないという思いがあった」

 ―「南風に乗る」では、瀬長亀次郎や山之口貘の視点で戦後の沖縄をリアルに描いている。

 「徹底的に資料を読んだ。登場人物に愛情を注ぎ、実際の人物よりもリアルな人物として描きたい。まちまーいにも参加し、汗だくになって街を歩いて回った」

 「沖縄の復帰運動は、日の丸の下ではなく、平和憲法の下への復帰として行われた」

 ―タイトルに込めた思いは。

 「週刊誌で小説の企画を出した時、編集者に読み方を問われた。あえて『はえ』と読ませていない。なぜ『まぜ』と読ませているのか。その謎は講演で明かしたい」