牛飼い37年の集大成、憧れの舞台で大トリ 伊波盛明さん<闘牛語やびら 復帰50年記念大会・全島大会>


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伊波盛明さんと復帰50周年記念大会の結びの一番に出場する貴花大獣王=うるま市石川

 木にくくってある綱をほどき、そのまま散歩に向かう。ずしりとした重みを感じながら、引きずるようにして進む。振り返って名前を呼ぶが、反応はない。それも当然。綱の先にあるのは石なのだから。「牛カラヤー(牛飼い)ならぬ石カラヤーよ」

 伊波盛明さん(64)=うるま市石川伊波=は、少年時代を振り返り、ケタケタと笑う。牛飼いを夢見た“石カラヤー”少年は50余年後、沖縄最重量1300キロの愛牛の綱を握ることとなる。

 闘牛が盛んな石川の伊波地域で生まれ育った伊波さんにとって、牛飼いは憧れそのものだった。夢が最初にかなったのは27歳の時だ。伊波小学校の同級生ら30人でお金を出し合い、念願の闘牛を手に入れた。

 「そこから6連敗するって誰が思うね」。大会では大きなのぼりを用意し、大勢で駆けつけるが、最初の牛で4連敗、次に手にしたみどり会伊波白金(しらがにー)で2連敗した。「組み合わせが悪いとか、毎回大げんかになるわけ」。共に世話する友人は1人去り2人去り、最終的には7人になった。

 しかしみどり会伊波白金は2連敗後、そこから巻き返し、伊波大会の大関戦での勝利を皮切りに6連勝。打ち上げ花火を飛ばすほどの大騒ぎだったという。その後、同級生グループだけでなく、個人でも闘牛を育て始めた。

 牛カラヤーとなって37年。今の愛牛・貴花大獣王(たかはなだいじゅうおうビッグボス)は県復帰50周年記念大会の結びの一番に出場する。「中学3年の時の復帰記念大会は会場に行った。まさか、50年後に自分の牛を出すことになるとは」と語る。50年前の復帰大会の2日目結びの一番、21連勝の横綱・荒風号と7連勝中の新鋭牛・荒鷲号の対戦は今でも忘れられない。

 「記念大会は特別だからね。自分たちが亡くなっても語り継がれる大会に出られるなんて、こんな名誉なことないよね」。石のように固い愛牛の背中を、期待を込めてぽんとはたいた。
 (新垣若菜)


 7日に県復帰50周年記念大闘牛大会、8日に全島闘牛大会がうるま市の石川多目的ドームで開催される。