平和憲法の再生は沖縄から 小説家・柳広司さん、自作の「沖縄憲法」も披露 憲法講演会


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沖縄と憲法をテーマに語る小説家の柳広司さん=3日、那覇文化芸術劇場なはーと(大城直也撮影)

 憲法記念日の3日、2022憲法講演会(主催・県憲法普及協議会、沖縄人権協会、日本科学者会議沖縄支部)が那覇市久茂地の那覇文化芸術劇場なはーとで開かれた。オンラインも含め、約500人が聞き入る中、戦後の沖縄を舞台とした小説「南風(まぜ)に乗る」を週刊ポストで連載中の小説家の柳広司さん(54)が講師として登壇した。沖縄の視点で日本の戦後を振り返る大切さや、憲法の在り方を語った。(前森智香子)

デビュー20年余りで、講演依頼は全て断ってきたため、今回が初の講演という柳さん。名護市辺野古の新基地建設を巡る2019年の県民投票の結果を、政府が尊重しなかったことに触れ「民主主義は説明し、納得してもらうもの。工事を中断して話し合うのが筋だ」と批判した。

 小説のタイトルで南風を「まぜ」と読ませていることについて、「南風に乗って沖縄が本土に帰って万々歳だというイメージは持たれたくなかった」と明かした。高知県などでは南風を「まぜ」と呼ぶとし、沖縄の視点で見ると、日米安保の矛盾など、戦後の日本の姿がよく見えると説明した。作品は米統治下の圧政と闘った政治家の瀬長亀次郎と詩人の山之口貘の視点で進んでいく。「作品に触れた読者が、沖縄という南からの風に乗る。沖縄の立場で戦後の歴史を振り返ることができるという小説にしたい」と語った。

登壇者に拍手を送る憲法講演会参加者=3日、那覇文化芸術劇場なはーと(大城直也撮影)

 復帰運動は、日の丸の下ではなく、平和憲法の下に帰るというものだったのに、沖縄の期待は裏切られており、平和憲法がなくなる危機にひんしていると指摘。「万が一、日本政府が憲法を捨てるなら、沖縄が拾って仕立ててしまうのはどうか」と提案し、「沖縄憲法」の前文を作ってきたと説明した。会場がどよめく中、「世界の全ての国々と平和に手を結び、万国津梁の精神のもと、誰もが健康で文化的な生活を送れるよう、ここに沖縄憲法を定めます」などと披露した。

 講演を聞いた那覇市の芝憲子さん(75)は「沖縄憲法素案は面白い試みで良かった」と評価した。大阪府の団体職員・今井貴美江さんは「トーク企画で、若い世代が沖縄の歴史を受け止めている様子が心強かった」と語った。