鳥すめる自然守りたい きょうから愛鳥週間 輪禍防止へ「安全運転を」


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救護されたヤンバルクイナを診察する獣医師の中谷裕美子さん=7日、うるま市前原のNPO法人「どうぶつたちの病院 沖縄」

 「today birds,tomorrow men(きょうの鳥はあすの人)」―。野鳥を介し自然を考える「愛鳥週間」が10日から始まった。沖縄は本島北部や宮古、八重山など各地に希少な鳥が生息し、渡り鳥の繁殖地にもなっている。特に春から夏にかけ鳥は繁殖期で活動的になり、人との接触も増える。野鳥の救護に奔走する獣医師は鳥が生息できる自然を保全することは「人の責任」と訴える。

 環境省やんばる自然保護官事務所によると、2022年に入って車にひかれたり、ぶつかったりして死んだ絶滅危惧種ヤンバルクイナは5羽(5月9日現在、速報値)。4月26日現在で1羽だったが、その後の大型連休と重なる2週間で4羽増えた。

 NPO法人どうぶつたちの病院沖縄(うるま市、長嶺隆理事長)は5月9日現在、ダイトウコノハズクなど希少種のほか、アカショウビンなど約30羽を沖縄全域から救護し、治療している。そのうちヤンバルクイナは8羽。最も長いのは12年10月28日に国頭村で猫に襲われ両目を失明したオスの成鳥、最も短いのは22年4月29日に同じく国頭村で車にぶつかり左目損傷、右羽骨折など全身打撲を負った幼鳥(性別不明)だ。

 救護に当たる獣医師の中谷裕美子さんは冒頭の警句を引き「鳥がすめない環境は、人もいずれ住めなくなる」と警鐘を鳴らす。人が森を削り、干潟を埋め、道を通し、車を走らせ、家を建て、鳥の生息域を奪ってきたとし「人の営みを止めようということではないが、鳥がすめる自然を残すのは生息域を奪ってきた人の責任だ」と語る。

 人の営みの結果、生じる鳥の交通事故についても「鳥は思いもよらぬところから飛び出してくる。やむ得ない事故もあるが、防げる事故もある」と指摘する。「まず制限速度を守ること。路上に何か見えた時、ごみではなく生き物かもしれないと疑うことだ」と注意を呼び掛けた。

 (安里周悟)