【記者解説】沖縄に「寄り添う」「聞く力」も 穏健さ強調…問われる首相の実行力 復帰50年インタビュー


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新基地建設が進む名護市辺野古の海域=2022年3月17日撮影

 【東京】沖縄が日本に復帰してから15日で50年となる。琉球新報は岸田文雄首相をはじめ沖縄政策に関連が深い閣僚に復帰50年の評価と課題を聞いた。岸田首相は琉球新報などの書面インタビューに応じ、鉄軌道の整備に向けて需要が増す可能性を踏まえて動向を注視する考えを示した。西銘恒三郎沖縄担当相は沖縄振興計画について、50年で社会資本整備が進んだことを評価する一方で「残る課題の解決に取り組む」と語った。岸信夫防衛相は普天間飛行場について名護市辺野古移設が「唯一の解決策」と語り、推進姿勢を改めて示した。

 岸田文雄首相は沖縄の日本復帰50年に合わせたインタビューで自身の政治信条とする「聞く力」を強調し、安倍晋三、菅義偉両政権が演説などで多用した「寄り添う」という言葉に加え、聞く耳を持つ姿勢を示した。過去の政権よりも穏健さを印象付けた格好だ。ただ、歴代首相の発言は行動が伴わないこともしばしばあった。岸田首相は言葉通り沖縄の声を聞き、有言実行できるか。実行力が問われている。

 岸田氏は復帰から半世紀を経てもなお、過重な基地負担にあえぐ沖縄の現状について見解を求めると「沖縄の皆さまの心に寄り添う」と語り、沖縄振興に全力で取り組む考えを示した。

 当時の日本政府が黙殺した、1971年の「屋良建議書」について問うた際にも、建議書を含む沖縄の「意見」を「受け止めながら、沖縄の発展のために取り組んできた」とした。辺野古新基地建設を強行するなど、強権的な振る舞いが目立ったこれまでの政権との違いをにじませた。

 ただ、こうした政治姿勢と現実の政策には乖離(かいり)もある。現実には辺野古推進の立場は堅持しており、新基地建設工事は着々と進む。辺野古移設問題を巡って県と政府との協議の場を求める玉城デニー知事に対しても明確な回答を避けている。インタビューでも県民が求める日米地位協定の抜本改定には踏み込まない考えをほのめかした。ただ「寄り添い」「聞く」だけでは、県民の負担軽減は望めない。
 (安里洋輔)