沖縄、農業のこれまでとこれから 離島の農家減、対策急務 JAおきなわ理事長・普天間朝重氏


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インタビューに答えるJAおきなわの普天間朝重理事長=14日、那覇市壺川(小川昌宏撮影)

 沖縄戦で焦土と化した沖縄の戦後復興はイモや米の食糧増産から始まり、その後、換金作物としてサトウキビが台頭した。台風と干ばつが常襲する沖縄ではサトウキビ以外は安定生産が難しく、病害虫の本土侵入を止めるため沖縄産の作物の多くは本土への持ち出し自体が禁じられる時期が続いた。しかし、復帰を境に水利事業が進展し、日本の農業政策の適用による生産技術の向上、病害虫根絶の大型プロジェクトの成功により、生産拡大と本土市場への出荷が本格化した。国内では沖縄だけという亜熱帯の気候条件を生かした端境期の出荷戦略から、近年は沖縄ブランドを確立して付加価値の高い農業へと転換を図りつつある。JAおきなわの普天間朝重理事長に、沖縄農業の変遷と今後の課題を聞いた。

 キューバ危機などを背景に1960年代はサトウキビの価格が世界的に急騰し、沖縄農業もサトウキビ一辺倒となっていた。だが復帰前後には、偏った産業の是正が必要だという議論がわき起こった。そこで沖縄ならではの亜熱帯気候を生かした冬春期の園芸品目に力を入れ、本土へ出荷する動きが促進された。

 特に彼岸用で重宝されたキク類などの花きは急速に伸び、最近ではマンゴーやパイナップルなどの果実も本土からの需要が大幅に拡大している。

 この50年で各品目の農業算出額に占める割合も大きく変わった。90年代の牛肉輸入自由化により、国内では高級和牛の生産に力を入れるようになった。これに伴い、県内でも県外購買者のニーズに応え、子牛の生産に一気に火が付いた。73年に26億円だった肉用牛の生産額は、2019年には239億円と農業産出額全体の24.5%を占め、本県農業の柱にまで成長した。

 ただ、農家や農業を取り巻く課題は尽きない。特に離島の人口動態は深刻だ。離島はサトウキビや畜産業など県の基幹産業の大半を支える重要拠点だが、農家の高齢化や後継者不足に歯止めがきかない状態だ。農家の所得向上は喫緊の課題で、営農の魅力が発信できれば若年層の離島定住や就農にもつながるだろう。国や県は民間任せではなく、離島対策に本腰を入れて取り組むべきだ。

 新型コロナウイルス感染症の世界的流行やロシアのウクライナ侵攻を受け、改めて食糧自給率向上の重要性も浮き彫りとなった。県民の食糧を守るためにも、国や県、市町村と関係機関が連携して抜本的に取り組まないといけない。
 (聞き手・當銘千絵、写真・小川昌宏)