沖縄の流通と小売業、これまでとこれから 客と価値観共有する時代に サンエー社長・上地哲誠氏


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インタビューに答えるサンエーの上地哲誠社長=14日、宜野湾市大山7(小川昌宏撮影)

 沖縄が日本に復帰して本土との人や物の往来が自由になったことで、大きく成長したのが流通小売業だ。2020年度の県内企業売上高ランキング(東京商工リサーチ調べ)の上位10社にはスーパー、コンビニの4社が入る。県民のライフスタイルの変化に伴い、「マチヤグヮー」と呼ばれる小さな商店が次第に姿を消してきたのに対し、郊外型の大型スーパーが台頭。今ではまちづくりにも不可欠な存在になっている。
 中でも1970年創業のサンエー(宜野湾市)の歩みは沖縄の業界の発展に重なる。上地哲誠社長に復帰後の歩みや今後の姿について聞いた。

 復帰前は商品を本土から仕入れても信用状が必要で、さらに通関手続きをしないと商品が入ってこない。非常に複雑で時間もかかった。今は仕入れたら即入ってくる。物の流れが非常に速くなった。

 (離島県なので)物流コストがどこよりもかかる。それを克服するために(サンエーの)創業者は物流センターをつくった。自前の物流システムで本土と沖縄間の物流コストを下げることに力を入れ、仕組みをつくってきた。

 流通小売業が発達した50年間で県民の消費生活の利便性が高まり、選択肢も増やすことができた。結果として生活が向上してきたと言える。

 地元企業として、沖縄で循環型の経済構造ができればいいと県産品の掘り起こしにも力を入れてきた。もう一つ大きな役割が雇用効果だと思っている。可能性を秘めた若い人材がいるのは武器になる。

 沖縄は人口が毎年5千人から6千人増加している。1人当たり100万円の購買力として、年間で50億から60億円の需要が新たに生まれているということになる。若い人の地元志向の強さが人口増につながって、市場の規模も拡大している。こんな恵まれた環境は全国でも珍しい。

 県民所得は本土に比べて低いが少しずつ上がっている。それに合わせるように消費額も増えている。地域の生活環境が向上してはじめて小売り流通業は成長する。沖縄がより豊かで住みよい環境であるのが大前提。そのための努力を企業はしていかないといけない。

 仕組み力、商品力、人財力に磨きをかけていくのがこの先も成長できる企業。お客さまと社員と会社が価値観を共有する時代になっている。お客さまが喜び社員が輝く。幸せを共感する企業をつくれば、復帰100年の沖縄はいい社会になる。
(聞き手・玉城江梨子、写真・小川昌宏)