沖縄の建設業、これまでとこれから DX導入で生産性向上 県建設業協会会長・津波達也氏


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インタビューに答える県建設業協会の津波達也会長=14日、浦添市牧港(小川昌宏撮影)

 沖縄の建設業は、復帰後の沖縄振興とともに発展を遂げてきた。インフラ整備を進め、ダム建造による断水の解消や、道路や港湾の整備による人流、物流の増大など、県経済の発展や県民の生活向上に大きな貢献を果たしてきた。

 近年では観光産業の成長に伴い、ホテルなどの民間投資も活発化している。一方で従事者の高齢化や人件費を含めた建築単価の高騰など新たな課題も生じている。県建設業協会の津波達也会長に、復帰後の変化や今後の展望などを聞いた。

 沖縄の建設業の大半は復帰後に成長した。復帰までの間に、本土では力強く戦後復興が進められていた。沖縄では建設需要がそれほど強くなく、技術的にも経営的にも全体的にぜい弱だったと思われる。例えば復帰後数年までは元請け直営方式が多く、専門分野に関係なく全てをこなすために生産性が低かった。沖縄国際海洋博覧会を契機に本土ゼネコンを参考に下請け、専門業者の育成を図り分業体制を確立し、大規模工事に対応して生産性の向上につなげた。

 復帰後の沖縄経済の成長に、建設業の果たした役割は大きい。経済はインフラが整備されて初めて活性化する。振興予算で実績を積んだことで技術も飛躍的に向上した。就労者の10~15%を雇用してきた点も大きい。

 公共投資依存とやゆされてきたが、産業がない時代に裾野の広い建設業に公的投資をしたのは正しかったと思う。利益の多くが本土へ還流しているという批判もあるが、建設産業は重層構造だ。元請けが本土企業でも下請けや専門工は県内が多く、地元に利益が残る。現在はよほど特殊な工法以外は県内企業で元請けが対応可能になった。

 インフラ整備にけん引された観光の発展に伴い民間投資が誘発され、2019年の建設投資約1兆円のうち民間と公共はほぼ五分五分となった。新型コロナさえ収束すれば今後も民間投資はさらに伸びるだろう。一方で公共投資の在り方として、WTO制度対象の入札案件の制度設計の見直しを提議し、県内受注を増やすことも大事だ。

 将来、沖縄振興計画が仮に終了しても、建設業の重要性は変わらない。インフラ整備は絶対に必要で、現行の公共投資に加え官民連携の手法が増えていくだろう。防災減災の面でも意義が大きく、インフラの維持管理の重要性が高まる。

 最大の課題は人だ。IT化に加えDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させ、人材確保・育成に力を注ぐとともに、カーボンニュートラルやSDGsへの取り組み、働き方改革、生産性の向上を推進し、より「魅力ある産業」にしていきたい。
 (聞き手・沖田有吾、写真・小川昌宏)