【識者談話】うちなー食文化「養生料理」継承を 西大八重子さん(西大学院学院長)


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西大八重子さん

 沖縄の食文化と言えば、筆頭に挙げられるのが豚肉だ。中国から伝わったとされる豆腐は琉球王国時代から存在し、最後の琉球国王・尚泰王の四男で美食家だった尚順男爵の好物でもあった。米軍統治時代に入ってきたポークなどの「缶詰」も、今では沖縄のチャンプルー文化を支える食材となっている。スーパーで缶詰が箱売りされているのも沖縄ならではではないか。

 近年沖縄の肥満率は全国ワーストとなっているが、背景には食生活の変化に加えて過食や運動不足がある。沖縄は元々、塩分の摂取量が少ない地域で、イナムドゥチに代表されるようにカツオや豚肉、シイタケなどを使った「だし文化」が根付いている。衣が厚い沖縄てんぷらは日持ちさせるためであり、高温多湿の沖縄の気候風土が生んだものだ。

 沖縄は中国や米国、本土から伝わった食文化を知恵と工夫でよりおいしくなるよう磨き上げてきた。また、ゴーヤーやシマナーなど栄養価が高く、抗酸化作用のある島野菜が豊富にある。

 沖縄の料理は「養生料理」であり、次世代に受け継がなければならない。今、世界で新型コロナウイルスが猛威を振るっている。コロナ禍は家の持つ役割、食の大切さを改めて認識する機会になった。文化や歴史は日々の暮らしの連なりでもある。今こそ生活に根付いた沖縄の食文化に目を向けてほしい。