【記者解説】「基地」発信 機会逸す 式辞に映らぬ民意 平等な負担、県外に響かず


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復帰50周年記念式典を終え、退席する岸田文雄首相(左)と玉城デニー沖縄県知事=15日午後、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター(小川昌宏撮影)

 沖縄の日本復帰50年を迎えた15日、県と政府が共催した式典で、玉城デニー知事、岸田文雄首相ともに、県政最大の課題でもある米軍普天間飛行場の危険性除去について言及を避けた。式典終了後、玉城知事が式辞で「未来志向」を表現したと語る通り、全体的に祝賀ムードも漂った。復帰以降の式典で、沖縄側が発信してきた強いメッセージ性とは一線を画し、県民にとっては過重な基地負担や抱える課題を内外に発信する機会をひとつ逸した形となった。

 式典終了後、玉城知事は辺野古新基地反対の立場について「『問題は絶対解決すべき』と掲げ、掲げた看板は下ろしていない」などと、新基地反対を堅持する姿勢を示した。岸田首相も同様に、終了後は、辺野古移設が「唯一の解決策」と従来の政府見解を重ねた。

 同日には、首相と知事の間で新たな沖縄振興計画の手交もあり、双方ともに式典中には言及しないという「配慮」をにじませた格好だ。

 一方、15日には県内各地で基地が集中する現状への抗議集会などが開かれた。配慮がにじんだ知事や首相のあいさつで、県民の複雑で、割り切れない思いが内包されていたのかは疑問符が付く。

 式典やレセプションはテレビ中継され、15日は国内のニュースは「沖縄一色」となった。しかし、琉球新報と毎日新聞のインターネット調査で、沖縄に基地が集中する現状について、県内では「不平等」が61%に達したが、全国調査では40%にとどまった。全国調査で、米軍基地が自分の住んでいる地域へ移設されることに52%が反対している。

 復帰から半世紀を迎えてもなお、平等な安全保障の負担を求めてきた沖縄側の訴えは「本土」に響かず、基地の問題は「沖縄の問題」と捉えられている。

 大多数の国民が日米安保の下での安全を是認する中、復帰の「節目」だけ沖縄に注目するのではなく、安保の代償として、危険や騒音被害にさらされる県民の日常生活を直視する姿勢が「本土」側に改めて問われている。

 (池田哲平)