バリアフリーと人情 心に染みる旅先の心づかい <台湾最強!彭國豪の沖縄発見>11


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ノンステップバスの介助用ボード

 台湾には今でも「百善孝為先(親孝行は最高の善行)」という考え方が普通に生きている。お年寄りを大切にする沖縄の気風に通じるところがあるかもしれない。たとえ歩くことが難しくても、病を抱えていたとしても、美しい景色をいっしょに見ておいしいものを食べて笑い合いたい。大切な人と楽しい思い出を残したいと思うのは、とても自然ですばらしいことだ。

 バリアフリーが普及し、たとえ障害があっても公共交通を利用し、観光地を楽しむことができるようになった。台湾も負けてはいないが、旅先での心づかいは特に心に染みる。ゆいレールのプラットホームから電動で乗降パネルが出て来る様子や、ノンステップバスで乗降を助けてもらった写真が何枚も共有され、称賛のコメントは時に百を超えることさえある。

あまりに食べたくなり、スパムを買ってきて彭さんファミリーが自分で作ってSNSに投稿した写真

 レンタカーも親孝行の強い味方だ。近年では車いすに乗ったまま電動で乗降できる福祉車両もレンタルできる。ツアーの日程にあくせくすることもなく、起きたい時に起き、疲れればホテルに戻り、食欲がなければスーパーの総菜やフルーツで軽くすませる自由ができた。それもそれで楽しい旅だ。

 弱者は高齢者だけではない。2017年、難病の幼児を連れ、初めて沖縄を訪れた夫婦がいる。出発前調べに調べ、おっかなびっくりの初回だったが、設備や制度、沖縄の人々の人情、そして夫婦のたゆみない努力で旅は成功し、以来コロナで国際線が閉じるまで、毎年沖縄を訪れていた。あの子がまた大好きなラーメンを食べられるのは、いつになるだろう。

(口述・沖縄彭大家族・彭國豪、翻訳と構成・渡邉ゆきこ)