「どう対応すべきか基準がない」PFAS血中濃度調査、県が消極的な理由とは


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 人体に有害とされる有機フッ素化合物(PFAS)が北谷浄水場の水道水などから高い値で検出されている問題で、「有機フッ素化合物(PFAS)汚染から市民の生命を守る連絡会」が6月下旬にも住民の血中濃度を独自に調査することが26日までに分かった。京都大学と連携する。対象は6市町村7地域の約350人を想定。連絡会は独自調査を国や県、市町村による広範な健康調査につなげたい考えだ。

 【中部】有機フッ素化合物(PFAS)の血中濃度調査は、京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)らが宜野湾市大山の住民を対象に実施した2019年に続き2度目となる。市民団体が独自調査に踏み出す。一方で県は「PFASと病気の因果関係は明らかになっていない。調査結果が出ても住民の不安には対応できない」などとして、県主体の調査に消極的な姿勢を見せる。

 19年の調査では、基地に近い市大山の住民44人と、比較するために南城市民61人のPFOS、PFOA、PFHxSの血中濃度を測定した。結果として、大山の住民からは全国平均の4倍のPFOSが検出された。コレステロール値や肝機能への悪影響が指摘され、規制に向けて国際的な議論が進むPFHxSは、全国平均の53倍だった。

 今回も調査に当たる原田准教授は「影響の範囲を明らかにしたい。結果を踏まえて、どう汚染を抑止するかが課題となる」と強調。その上で「行政が把握し、関わることで原因を絶ち切ることにつながる」と訴えた。

 一方で、県健康長寿課の崎原美奈子課長は「検査でPFASの値は分かるだろうが、その値が高いのか低いのか、その値が対応すべき値なのか、対応すべき値ならどう対応するのか、基準がない」と説明する。住民が抱くPFAS汚染への不安を重く認識しつつも、病気などとの因果関係については「明らかにするためには全国的な健康調査がいる」と述べ、県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協)で国に基準設定と健康調査を求めているとした。
 (新垣若菜、安里周悟)