【識者談話】主権問題が政争の具に 自民党機関誌から見えた認識の甘さ 前泊博盛・沖国大教授


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前泊博盛氏(沖国大教授)

 日米地位協定を巡って「主権をどうやって回復するか」という問題を政争の具にし、一政党のやゆに使う自民党の認識が問われる。「共産党を批判すれば票が集まる」という認識は甘い。無知と無視と無関心、対米従属姿勢を浮き彫りにした。

 岸田文雄首相が自民党政調会長だった2017年10月、来県時に東村高江で米軍ヘリの炎上事故が起きた。岸田氏は長く外相を担った過去がある。だが、岸田氏は当時、在沖米軍トップのローレンス・ニコルソン四軍調整官に抗議のため面談を求めたが断られた。米軍基地問題で自民党の存在感は地に落ちている。

 今回の記事は自民党自身も地位協定改定案を作った経緯を忘れている。改定案に関わった河野太郎氏は外務、防衛相を歴任したが、任期中は改定問題に着手しなかった。議員時代は自由に発言しても、政権に入ったら「地位協定に触れない」という暗黙の了解があるという。「パンドラの箱は開けない」という姿勢が徹底しているのが自民党の鉄則だ。

 対米追従の自民党が政権を長く担ったことで、対米追従が国是となった感がある。地位協定の問題を巡って、自民党は傍観者的な発言を繰り返している。地位協定の問題は「沖縄か、基地所在地に限られる」と、傍観者的な認識がある。「政権与党」という認識が不足している。
 (安全保障論)