キングス担当記者が振り返る2021ー22シーズン 悲願へあと一歩 歴代最高の勝率


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CS決勝 キングス―宇都宮 第2クオーター、シュートを決める岸本隆一=5月29日、東京体育館(Bリーグ提供)

 プロバスケットボールBリーグの琉球ゴールデンキングスは、2021―22シーズンの年間王者を決めるチャンピオンシップ(CS)決勝に臨み、宇都宮ブレックスとの頂上決戦に惜しくも敗れた。リーグ開幕6年目。西地区を5連覇し、5度目の挑戦で初の決勝進出だったが、悲願の優勝に一歩届かなかった。それでも西地区から初の準優勝に上り詰めた。ファンを熱くさせたレギュラーシーズンとCSの戦いを振り返る。

■リーグ記録の20連勝

 11月14日の群馬戦からキングスの連勝街道が始まった。12月の宇都宮2連戦はいずれも第4クオーター最終盤までもつれ、終了直前に逆転のシュートを決めるなど劇的勝利で勝ち星をつないだ。快勝を続ける中で、3~4点の僅差の試合も制するなど冷静な判断力や修正力が光り、3月9日の広島戦までに勝ち星を積み重ねた。

 11月序盤に主将の田代直希が左膝のけがで離脱したものの、出場時間を伸ばした牧隼利が成長を見せ、逆境の中でチーム力が底上げされた。今季は連敗がなく49勝7敗で、勝率はリーグ歴代最高の8割7分5厘を記録した。
 

■動き続けるバスケット

 高い勝率を維持した背景には、桶谷大ヘッドコーチが掲げた自己犠牲の精神と、人もボールも動き続けるバスケットボールの体現にあった。味方を援護する動きをいかに増やすか。今季は並里成を先頭に、個人技に走らず各選手が最適な得点機を見いだすために汗をかいた。

 本来はゴール下に切り込んで攻撃の起点となる並里は、成績こそ数字には出ていないが「今季は周りにさせる」意識だったという。「ボールに触る時間は短いが、周りがステップアップ、レベルアップしたと感じる」と振り返るなど、共通認識を持って取り組めたシーズンだった。

 新加入組も大きな役割を果たした。ガードながら豪快なダンクが魅力のコー・フリッピンは、持ち前の俊敏性を生かし好守で躍動。スチール力はキングスの堅守をさらに強化した。外国籍のアレン・ダーラムと日本国籍取得選手の小寺ハミルトンゲイリーがドウェイン・エバンスとコートに立ち形成される「3ビッグ」が新たな“手札”に加わった。ダーラムはエバンスに引けを取らない万能型として存在感を発揮。攻撃の幅が大きく広がった。
 

■経験の差

 短期決戦のCS。キングスは過去最高位の準優勝に輝いたが、頂点にはたどり着けなかった。その差に桶谷HCは経験値を挙げた。優勝した宇都宮は5年前の優勝を経験したメンバーが残り、さらに昨年準優勝した主力も残ったままだった。

 堅守を強みとするチーム同士の争い。守りの仕掛けから攻撃への切り替えなど、勝負どころで試合運びや鍵となる選手起用など先手を打たれてしまった。

 キングスは主力選手が欠場したことも体力的、戦略的に厳しくなったことは否めなかった。それでも最終盤まで勝負は分からない内容だった。

 キングスなどでプレーし現在はバスケットスクールのスキルズラボでコーチをしている山城拓馬さんは、キングスの今季の強さに各選手の成長を挙げる。「けがというアクシデントはあったが、そこからベンチスタートメンバーがステップアップした」と来季へ期待を膨らませた。「バスケットのチームのカルチャーは継承されている。決勝まで行った経験、悔しさは来季につながる。選手もファンも同じ気持ちでさらに強くなると思う」と見通した。

 (謝花史哲)