長靴の中やショベルカーの座席近くにも出没…急増するタイワンハブ、住民が危機感 沖縄本島北部


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 【北部】強毒のあるタイワンハブの捕獲数が急増している本島北部では、日常の生活の中で不意に遭遇する事例が出てきている。「注意したとしても、どこにいるか分からない」と地域住民は危機感をあらわにする。県は5月からハブ咬傷(こうしょう)注意報を出して警戒を呼び掛けている。

長靴の中に潜むタイワンハブ=5月28日午前、今帰仁村

 5月28日午前、今帰仁村で畜産業を営む60代男性が作業のために長靴に履き替えようとすると、靴の中に小さなハブが潜んでいるのに気づいた。タイワンハブとみられ、捕獲して村に届けた。

 男性は昨年7月にも危険な目に遭った。ショベルカーを運転中に座席わきの支柱にタイワンハブが巻き付いているのに気がついた。「逃げ場がなく恐ろしかった」と声を震わせる。かまれてしまい、救急搬送された知人もいるという。

 今帰仁村によると、タイワンハブは古宇利島を除き、村全域で確認されているという。屋敷内や水道メーターが収納されている箱で見つかったこともある。学校にも出没することから、村教育委員会は今帰仁小学校などにハブ侵入防止用のネットを設置している。

 村は生きたネズミを使っておびき寄せる捕獲器を約100カ所に設置するなど対策もしているが、定期的なメンテナンスが必要になる。男性の畜舎付近に設置された捕獲器は、メンテナンスが行き届かず、ゴキブリやアリの巣と化していた。

タイワンハブの侵入を防止するためのネット=3日、今帰仁小学校

 男性はハブ被害が観光産業に影響することも懸念している。「30年前は全くいなかったが、今では当たり前のように見つかる。行政はもっと対策に力を入れてほしい」と訴えた。

 気温の上昇で、ハブの活動が活発化するとして、県は6月30日までハブ咬症注意報を発令している。対策として(1)ハブが隠れる草むらの草刈りや餌となるネズミの駆除など生息しにくい環境をつくる(2)田畑や山野、草地に立ち入る際や夜間の外出時に注意する―などを呼び掛けている。

 県はハブを見掛けた場合は1・5メートル以上離れ、市町村に連絡するよう求めている。緊急時は110番通報するなどし、かまれた場合は激しい動きをせず、助けを呼び、すぐに受診するよう呼び掛けている。

(長嶺晃太朗)


用語 タイワンハブ

 中国南部、台湾原産で、全長80~130センチ。体は茶色や灰褐色で、暗褐色のだ円形の斑紋が並ぶ。県内では、1993年に名護市で野外で初めて確認された。95年ごろには本部半島周辺で定着したとみられる。70~90年代にマングースとの決闘ショー、ハブ酒の原材料の用途で輸入されていた。野外で初確認された個体は、逃げたか遺棄された可能性が指摘されている。