汚染水処分に数億円か 自衛隊施設PFAS 環境への影響調査必要 


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 防衛省が全国約60の自衛隊施設で消火設備を調べたところ、消火剤を薄めるために真水をためている消火用水槽から、国が定めた暫定指針値を超える有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)が検出された。本来は高濃度のPFASが存在していることは想定されていない水槽で、原因や経緯の究明が必須だ。防衛省は水槽内の水の処分を検討しており、総費用は数億円に上るとの試算もある。防衛省は3月中旬までに調査結果を受け取っているが、まだ正式な公表に至っていない。

 一般的に泡消火剤は航空機など火力が強い火災が発生した場合、抑え込むために使われる。消火薬剤の原液で保管しておき、使用時に真水で薄めて泡を立て噴射する。自衛隊の消火設備も同様だ。今回、防衛省が調べてPFASが高濃度で検出されたのは、泡消火剤の容器そのものではなく、真水をためていた消火用水槽だ。防衛省は現在、PFASの一種で特に毒性が指摘されて使用や製造が規制されているPFOS(ピーフォス)を含有しない消火剤に順次切り替えているが、混ぜ合わせる水が汚染されていれば切り替えも無意味となる。

 全国調査のきっかけになったのは、2021年2月に航空自衛隊那覇基地から泡消火剤が飛散した事故だ。PFOSを含まない消火剤に交換した直後だったことから、空自は当初、飛散した消火剤に「PFOSは含有していない」と説明していた。だが、琉球新報の記者が現場近くから採取した泡を京都大の原田浩二准教授が分析したところ、PFOSが検出された。空自が那覇基地の消火設備を調べると、消火剤と混ぜる前の水が汚染されていたことが明らかになった。

 これを受けて防衛省は全国調査に乗り出した。対象は過去にPFOSを含む泡消火剤を使っていた可能性のある約60の施設だ。その8割弱で、PFOSとPFOA(ピーフォア)の合計値が国の指針値(1リットル当たり50ナノグラム)を超える結果となった。県内では、海上自衛隊の那覇基地では最大7万倍余り、空自那覇航空基地では最大3万倍余りに上った。空自知念分屯基地(南城市)も指針値を超えた。

 琉球新報の調査を機に全国調査に波及しなければ、気が付かないまま、自衛隊が汚染された水を使い続けていた恐れがある。調査を徹底して実態を把握する重要性が改めて浮き彫りとなった。

 一方、過去の使用ですでに周辺が汚染されている可能性も否めない。環境調査の必要性について、3日の閣議後会見で問われた岸信夫防衛相は「内容を整理した上で対応していく」と述べるにとどめた。 (明真南斗)