「質疑応答は必要最小限に」 陸自「参拝」文書、その内容と自衛隊の意図は?


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
黎明の塔に献花した後、塔を見つめる佐藤真第15旅団長(手前左)ら=2021年6月23日午前4時51分、糸満市摩文仁の平和祈念公園(ジャン松元撮影)

 「慰霊の日」の陸上自衛隊第15旅団長らによる「黎明之塔」への「参拝」に関する陸自の内部文書は、2021年6月23日に作成されたもの以外に複数あった。抗議団体など外部への対応方針を記したものもあり、「私的参拝」とする従来からの主張を正当化するために組織内で意思統一を図ろうとする意図が見え隠れする。

 「質疑応答は必要最小限に止める」。陸自第15旅団司令部が作成した、「参拝中止」の申し入れに対する文書には、「基本的対応」として、こう記されている。その理由として、「『個人の私的に行う慰霊』であると回答しているため」としており、従来の主張とつじつまを合わせることに腐心する様子がうかがえる。

 18年6月7日、陸自が抗議団体から「参拝」の中止を求める要求書を受け取った際のやり取りをつづった文書には、「組織的行為としか見えない」などと「参拝」の組織性を問う部分にアンダーラインが引かれており、こうした指摘への警戒感が顕著だ。

 21年6月7日に陸幕監部が作成した別の文書では「回答のスタンス」として「隊員が制服を着用して、私的に慰霊を行うこと自体は問題ないものと考えている」「隊員が個人的に慰霊を行っているものであり、過度な介入を行うことは不適切」とある。

 国会議員など外部からの問い合わせに対する答弁で、従来から問題視されている制服を着用しての「参拝」について指摘を受けた際の想定とみられる。

 20年8月18日の文書では、同年に実施された「参拝」について陸幕が受けた質問に関して、「陸幕としての回答案」を旅団長ら第15旅団3役の指示を仰ぎ、それぞれの署名も得ていた。慣例化している「参拝」が組織内で許容されている実態が浮かび上がる。
 (安里洋輔)