【識者談話】陸自「参拝」文書の存在、「私的」前提を逸脱 軍事評論家・小西誠氏


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小西 誠氏

 陸上幕僚監部が、陸上自衛隊第15旅団の隊員による「黎明之塔」への「参拝」について情報共有していたということは、陸幕が、組織として隊員の行動を監督していたことになる。隊員の「私的参拝」で、組織的な関与がないという主張は、一般市民の理解は得られ難い。明らかに隊員の私的な行動であるという前提を逸脱している。

 あくまで隊員の「私的参拝」と主張するのであれば、陸幕は「参拝」に一切、関知せず、監督もしないという立場を貫くべきだ。

 第15旅団による「参拝」は、トップの旅団長ら最高幹部が制服を着用している点からも公的な側面を帯びる。

 自衛隊内では、隊員の公務外の服装について、戦闘服あるいは私服の着用を奨励している。制服の着用は慣例として入隊式などの公式行事に限られている。

 戦闘服、制服を着用して隊員が集まるのは、部隊の参集に他ならない。

 「黎明之塔」への「参拝」が、空自、海自では行われず、陸自の第15旅団だけが毎年実施しているということは、部隊の「伝統」になっているのだろう。陸幕が、こうした慣例化した部隊の行動を組織として是認しているということにもなる。組織統治の面からも適切とはいえない。

 近年、いわゆる制服組の「現場」の権限の肥大化が顕著で、今回の件もその典型的なケースだ。
 (元自衛官、軍事評論家)