児相の対応「福祉の放棄」「傷付きを感じる心足りず」 里親委託解除で調査委が中間報告


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中間報告を発表する、里親委託解除に関する調査委員会の鈴木秀洋委員長(左)=10日、那覇市の県庁(大城直也撮影)

 50代夫妻が養育していた児童の委託解除をめぐる問題点を検証する調査委員会は、里親制度に関する県福祉行政の課題を浮き彫りにした。10日に会見した同委員会の鈴木秀洋委員長は、児童相談所の法的知識の軽視や、弁護士を前面に出した進め方は「福祉対応の放棄」とした。委託解除に至る過程を検証できなかったのは、県側に組織として「傷付きを感じる心」が足りず、結果的に児童や関係者にとって「なくて良かった経験」をさせたと指摘した。

 今回の事案を踏まえてよりよい里親制度にするため、県の児童相談所には他分野の専門的知見を取り入れる環境整備や、子どもだけでなく里親の声を聞き、権利を擁護する「里親支援制度」の導入を提言した。

 調査委員会の中間報告では、児相の職務に向かう姿勢に敬意を表した上で、今事案では児相内部で多様な意見を基にした議論がなされず、本庁との連携が機能しなかった点を挙げ「組織的責任は多い」との見方を示した。

 今事案で、児相は元里親が児童に実親の存在を知らせる真実告知をしなかった点を問題視していた。しかし鈴木委員長は、児相が里親に真実告知の法的義務があると誤解したことで、元里親の適格性に問題があるというストーリーをつくり上げたとしている。こうした対立構造の中で児相に配置された弁護士により、元里親に対して委託解除後に児童を引き渡さなければ誘拐罪が適用されるとの書面を交付した。児相が弁護士配置制度をうまく活用できなかったと指摘している。

 報告書では経過記録の正確性に疑問があると指摘している。鈴木委員長は多忙な業務の中、完璧な経過記録を作成することが難しいことに理解を示しつつも、里親委託解除前に、県社会福祉審議会の審査部会に資料を全て提出していれば「判断は違ったのではないか」との考えを示した。さらに、1月4日に元里親から児童を引き離す対応に至るまで「引き返すポイントはいっぱいあった」と強調した。

(嘉陽拓也)