違法密猟、摘発に道険しく 広大な森、規制・監視に限界 希少種のネット出品


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何者かが林道沿いに設置した昆虫を捕まえるトラップ=2021年11月、本島北部(環境省やんばる自然保護官事務所提供)

 【北部】イボイモリなど貴重な動植物が生息する沖縄島北部のやんばる地域では、貴重な野生動植物の持ち去り、違法な採取などが長年の課題となっている。自治体や地域住民らが林道パトロールなどによる密猟防止に取り組んでいるが、広大な森で監視の目を光らせるには厳しい現状があり、密猟者の摘発まで至るのは容易な道のりではない。

 密猟対策の一環で、地元自治体などは林道の夜間通行の規制を実施している。環境省はこれまで国頭村森林組合や地域住民で構成される「やんばるリンクス」に委託し、林道パトロールや密猟防止のための普及啓発活動などに力を入れてきた。パトロールは年約130回、夜間を中心に実施している。

 やんばる自然保護官事務所によると、林道沿いで、昆虫を捕まえるためのトラップ(わな)が仕掛けられているのがたびたび目撃されている。木に打たれたくぎが見つかることもある。ヤンバルテナガコガネなどの昆虫がすむうろの中を探るため、密猟者が足場として設置した可能性がある。

 パトロールに一定の効果を認めつつ、もどかしさを隠さない関係者もいる。元国頭村職員で林道を巡回してきた大城靖さん(62)は、パトロール中、手持ちライトを木の上に当てながら夜の林道を走行する乗用車に遭遇。ヤンバルテナガコガネなどを探してるのではと思い声を掛けると、運転席の若い男性は「カメを探している」などとはぐらかした。車内や手荷物などの中は確認できず、「夜の林道の通行には村許可が必要」と説明するのみにとどめたという。

 環境省やんばる自然保護官事務所の安藤祐樹国立公園保護管理企画官は「林道パトロールなどによる抑止効果はあると考える」と強調。「地元が目を光らせている。貴重な動植物を未来に残すため、密猟はやめてほしい。今後も地元住民らと連携して対策を続ける」と述べた。
 (長嶺晃太朗)


<用語>絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)

 国内希少野生動植物種(427種・2022年1月現在)に指定された動植物の保全などを目的に、1993年4月に施行。販売・頒布目的の陳列・広告、譲り渡し、捕獲・採取、殺傷・損傷、輸出入などが原則禁止されている。生きている個体だけでなく、はく製や標本、羽や牙などの個体の一部、毛皮製品や装飾品なども規制の対象となる。生育環境の保全が必要な場合は、開発行為なども規制される。捕獲、譲り渡し、輸出入などを行った違反者は5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金。法人の場合は、1億円以下の罰金が科される。