うるま市教育委員会が市内小中学校を対象に4月に導入した「個人研究」と「単元テスト」について、準備や事後の作業があまりにも負担が大きいとして教員から「働き方改革に逆行している」と不満の声が上がっている。市教委は「これまでの取り組みを整理統合した上での実践で、負担が上乗せされるものではない」と説明するが、給与にも影響する教員評価の資料になる可能性もあり、県教職員組合(沖教組)には負担増を訴える声が多数寄せられている。「説明が不十分で詳細が分からない」との意見も多く、沖教組は実態把握を急いでいる。
新たに導入された取り組みは二つ。教員一人一人がテーマを設定し、年間を通して授業研究を深める「個人研究」と、子どもの学力定着・向上を目指す「単元テスト」。
「個人研究」は、年度内に1人2回の公開授業を開く。3月には市教委への報告書の提出が必要。数値を用いるなどして成果目標を掲げ、実現に向けた公開授業の計画を立てる。授業後は、管理職や市教委などからの指導助言を記録する。
市教委は「2回目の授業は普段の授業を管理職に見せるなど学校で簡素化もできる」と説明。報告書も市教委が作成した「見本」があるが「内容や様式は学校で変更可能」。授業の公開も報告書も各学校で簡略できることから、新たな負担にはならないと考えている。
報告書は、管理職による教員の評価面談の補助資料として使用可能。取り組みの周知は昨年度中に管理職らに説明した。
「単元テスト」は、朝の学習時間または授業中に行う。民間のオンライン学習サービス「スタディサプリ」を活用する。子どもたちはタブレット端末で、単元テスト実施計画に基づき配布されるテストを解く。
正答率が80%未満の場合は補習が必要。補習は「アプリ内の動画を活用したり、放課後に配置される学力向上支援員を活用したりできる」(市教委)。支援員は各校に1人配置が目標だが、半数しか確保できておらず、実質的には教員が担うことになる。支援員は教員免許が必要だ。
市内小学校勤務の男性は「教員志願者が減って、採用試験の合格点も落ちている。教員の資質向上は必要だが、実感できる負担軽減がないまま、評価にもつながる報告書の作成まで求められると負担増でしかない」と憤りを隠さない。別の教員は「コロナ下で、今まで以上に子どもへの声掛けが必要だ。何に時間をかけるべきか分かっていない」と落胆した。
一方、市教委は「思いが現場に伝わっていない。今後削減された業務があることに気付いてもらえるはずだ」と理解を求める。整理統合した取り組みについて、具体的には「学力向上推進担当者の会議を年5回から3回に削減」「各教科ごとの研修の抑制」などを挙げた。また「年度末に、子どもの読書冊数や家庭学習ノートの冊数などをまとめる報告書も不要にした」と話す。「個人研究の報告書もA4用紙1枚程度で構わないとしている。日々の振り返りができるため、学校の風土づくりにもつながる」と自信を見せる。
両者の思いはすれ違ったまま、現場では運用が進んでいる。沖教組中頭支部は「納得できない運用を強いられれば、先生たちはさらに心身が疲弊する」として、オンライン説明会など理解形成の場が必要と考えている。
(嘉数陽)