「楽しく弾くことが大事」ショパンコンクール4位の小林愛実さんが大切にしていること


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繊細で柔らかいピアノの音色を奏でる小林愛実=7日、那覇市泉崎の琉球新報ホール(大城直也撮影)

 昨年のショパン国際ピアノ・コンクールで4位入賞を果たした山口県出身のピアニスト、小林愛実の県内初リサイタル(主催・琉球新報社)が7日、那覇市泉崎の琉球新報ホールで開催された。小林に同コンクールに出場した時の心境や、ピアノとの向き合い方などを聞いた。(聞き手・田中芳)

 ―2015年にショパンコンクールに出場しファイナルに残り昨年、4位入賞を果たした。

 「転機は2015年のショパンコンクールに出場したのがすごく大きかった。自分の意志でピアノを演奏したいのか、周りの環境によってピアノを弾き続けているのか、自分自身が分からなくなってしまい、日本にいるのがだめなのかと思って、(高校3年生の頃に)アメリカに行ってみたが、その気持ちは変わらなかった。いろんなことがあってショパンコンクールに出場した。ピアノを弾く楽しさや、何でピアノを弾いているのか、その答えというのを得ることができ、自分がピアノを続ける理由を見つけることができた。昨年は2回目の挑戦だったので、自分がどう成長したかを表示できないとだめだと思い、前々回で弾いた曲は一曲も弾かずに、新しい曲で挑戦した。ステージで弾く以上、楽しんで演奏することが、コンクールとはいえ大事なのかなと思う」

 ―コンクールを終えて変化は。シューベルトの作品にも取り組んでいる。

 「ショパンコンクールが理由ということではないが、自分の中で一段落ついて、今挑戦すべきかなと思っている。ショパンコンクールは特殊なコンクール。一人の作曲家を中心に軸を置いて取り組むと、音楽家としていろんなものが見えてくると思うので、やっぱり自分が好きな作曲家に軸を置いて、時期を決めて取り組むというのは、すごく意味のあることなのかなと思う」

 ―演奏で特に意識していることは。

 「弾きたいように自由に楽しく弾くのが大事。あとは音を聴いてピアノやホールに順応して弾いていかないといけない。試行錯誤してどうやったらいいのか、いろんなことを考えて、(コンクールは)プレッシャーや緊張もものすごくあるが、自分ができる限りの演奏をするということだけだと思う。弾くのは自分自身。自分ならできると思って舞台に上がっている。一番大事なのは作曲家、作品に真摯(しんし)な気持ちで尊敬を持って取り組むということ。それさえ忘れなければ大丈夫だと思う」

 ―これからどんな演奏家になりたいか。

 「私はただ、楽しく弾ければそれで十分。心から楽しんで演奏するというのが私は難しい。でも、それができているうちはたぶん『自分は音楽家だ』と胸を張っていられるかな。楽しくピアノを弾くことができて、それによって音楽家の方たちと共演できたり、いろんなホールで演奏したりできたら。演奏会が一番楽しいので、コンサートを続けていけたら幸せだ」