【詳報】立候補予定者2人の訴え、会場の質問への回答は?参院選沖縄選挙区公開討論会


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立候補予定者公開討論会で、考えを述べる伊波洋一氏(右から2人目)古謝玄太氏(右端)=16日、那覇市泉崎の琉球新報ホール(小川昌宏撮影)

 22日公示、7月10日投開票の参院選を前に、琉球新報社は16日、那覇市の琉球新報ホールで立候補予定者公開討論会を開催した。選挙戦で事実上の一騎打ちが見込まれる無所属現職の伊波洋一氏(70)と、自民新人の古謝玄太氏(38)=公明推薦=が登壇し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設計画や経済振興策、新型コロナウイルス対策などで舌戦を繰り広げた。討論を通じて、辺野古移設への立場や経済対策・振興の手法の違いなどが一層鮮明となった。初顔合わせとなった両氏は自身の強みや選挙戦で最も訴えたい主張を交えながら、互いの政治姿勢などを巡って白熱した討論を展開した。(文中敬称略)(’22参院選取材班)

[スピーチ要旨]

<伊波洋一氏> 沖縄を戦場にさせない

 6年前に力強い支援で国会に送り出してもらった。国会質疑は6年間で170回に及んだ。県出身国会議員でつくる「うりずんの会」では新型コロナ対策について国に要請し、さまざまな施策を実現させた。時限的な消費税の5%減税を行い、ガソリン価格などの物価高騰に取り組む。

 私は母子家庭で病弱な母の面倒を見ながら育ち、大学時代はアルバイトで学費や生活費を捻出した。子どもの貧困対策を強化し、ヤングケアラーを支援する。

 私が生まれた宜野湾市嘉数の集落は沖縄戦の激戦地で半数以上が亡くなった。悲惨な沖縄戦の話を聞いて育った。米軍基地は県民の民意と相いれない。普天間飛行場を返還しないで辺野古新基地建設を強行する日米両政府に、怒りを覚える。

 二度と沖縄を戦場にさせない決意で、今回の参院選に臨む。沖縄で生まれ育ち、働き暮らしてきた者として、ウチナーの声を国会に響かせて新・沖縄21世紀ビジョン基本計画を国政の場から実現させる。玉城デニー知事とともに、平和で豊かな沖縄を実現する。

<古謝玄太氏>沖縄の未来のため尽力

 私は今38歳で、地元は那覇市首里石嶺町。大学から東京に出たが、いずれは沖縄に帰って沖縄のために働きたいとの思いを持つようになり、総務省に入省して10年以上さまざまな経験をした。

 国の中枢や地域、そして民間での経験を持ち帰って、沖縄の未来のために尽力したい。復帰50年だからこそ、10年、20年、50年先の沖縄をどう描くかが問われている。

 沖縄が目指す「三つの未来」を掲げた。一つ目は「しなやかで強い経済を持つ沖縄」で社会情勢の変化に耐えられる経済をつくっていく。二つ目は「誰もがチャレンジできる沖縄」だ。県出身者も県外から来る人も挑戦できる環境づくりに取り組む。三つ目は「みんなが笑顔でいられる沖縄」だ。私は今4人の子育て中。豊かな環境や平和を次世代に引き継がなければならない。

 未来は言ってるだけでは実現しない。しっかりと筋道を立てて、国と県と市町村が連携し制度や予算を作り、一歩ずつ取り組む必要がある。これまでの経験を最大限に活用し、豊かな未来のために尽力していく。

 


 

[会場から質問]

子の貧困 居場所支援―古謝氏
人材育成 奨学金に力―伊波氏

 公開討論会では来場者からも質問を集め、2氏に見解を聞いた。

 子どもの貧困に関して教育費の無償化以外の対策はあるかとの質問に、伊波氏は「子どものケアも大事だが、原因は親の貧困にある。親の貧困をケアするため、就職支援や相談に乗るなどのケアが必要になる」と答えた。古謝氏は「親の貧困もあり家庭によって状況はいろいろある。子ども食堂など居場所づくりを支援し、自己肯定感を育てることも必要だ」と述べた。

 人材育成をどう重視するかという問いも寄せられた。古謝氏は「物流コストがかかる沖縄にとって人材は宝物だ」と主張し、沖縄独自の環境を生かした英語教育、グローバル化教育などに取り組むとした。伊波氏は「沖縄では本土の大学に行くのにも大きな費用がかかる」と指摘し、子どもの就学支援や返済義務のない奨学金などに力を入れる考えを訴えた。両氏とも県内大学での薬学部設置を政策に掲げている。

 「介護の貧困」にどう取り組むかという質問に対して、伊波氏は「1割負担が使えない状況は支援する必要があるし、県全体の所得水準上昇が大事で、介護の困難な皆さんを支援できる制度を作り上げていく」と強調した。古謝氏は「介護人材を確保し、処遇改善を進め、介護施設を整えることが重要だ。困窮者対策が足りなければ制度の漏れを防いでいき、制度を構築していく」と説明した。

 


 

<出席者>

伊波洋一氏(70)=無所属現職
 いは・よういち 1952年1月生まれ。宜野湾市出身。琉球大卒。宜野湾市職員、県議を経て、2003年から宜野湾市長を2期途中まで務めた。16年参院選沖縄選挙区で初当選。1期目。

古謝玄太氏(38)=自民新人、公明推薦
 こじゃ・げんた 1983年10月生まれ。那覇市出身。東京大卒。2008年に総務省に入省し、長崎県財政課長や復興庁参事官補佐などを務めた。3月までNTTデータ経営研究所勤務。

司会 与那嶺松一郎(琉球新報編集局政経グループ長)

司会 竹中知華(ラジオ沖縄アナウンサー)