伊波陣営、経済重視を前面に 政治経験で差別化図る<潮流・22参院選沖縄選挙区>上


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雨の中、支持者に訴えかける伊波洋一氏=16日午後、那覇市の県民広場

 16日昼、那覇市の県庁前県民広場に、参院選で2期目の当選を目指す無所属現職の伊波洋一氏(70)の姿があった。

 「これ以上、米軍基地や日米両政府に翻弄され続けてはいけない。沖縄の声を上げる時期に至っている」。梅雨空の下、名護市辺野古の新基地に反対する「オール沖縄」の立場を改めて強調した。

 基地問題に精通することで知られる伊波氏だが、今回の選挙戦略は、訴えの大半が米軍基地問題に終始した6年前とは様相が異なる。

 13日の政策発表で、伊波氏はまず「コロナ禍で影響を受けた県経済の再生に力を入れる」と強調した。主要10項目の政策でも所得向上や地域振興に関する記述を先に記し、辺野古新基地建設反対は最後に掲げた。コロナ禍という未曽有の危機を踏まえ、基地だけではない「経済の伊波」を前面に打ち出す。

 ただ、伊波氏自身が「同列だ」と説明するように、辺野古新基地建設阻止という訴えは健在で、その主張は日増しに強まっている。

 背景には、事実上の一騎打ちとなる相手の自民新人・古謝玄太氏(38)=公明推薦=が、これまでの自民候補とは一線を画して辺野古「容認」を打ち出したことがある。伊波氏周辺は「相手と差別化を図り、争点軸をはっきりさせるためだ」と、「辺野古」の比重を高めた理由を解説する。

 イメージ面でも「若さ」を売りにする古謝氏との差別化を図る。霞が関官僚や県外民間企業の経験を強調する古謝氏を意識するように、県議や宜野湾市長といった県内での豊富な政治経験や県民目線をアピールする。

 陣営は伊波氏が初当選した2016年並みの投票率54%、得票数約35万票を目標と設定する。ただ、19年の参院選沖縄選挙区の投票率は49%まで低下し、新型コロナの影響も左右する。

 現職の知名度をさらに高めようと、伊波氏が有権者に語りかける場面を増やす一方、古謝氏に出遅れるSNS戦略の立て直しを進める。9月に知事選を控える玉城デニー知事とのセット戦術による効果も見込む。

 陣営関係者は「新たな票の掘り起こしよりも、基礎票の取りこぼしがないようにしないといけない」と語る。これまでの参院選沖縄選挙区の勝敗をみると、革新勢力やその流れをくむオール沖縄勢力のほうが自民よりも勝ち星が多い。一騎打ちに限れば勝率はさらに上がる。全県選挙で強さを見せてきた従来の支持基盤を固められるかが焦点となる。

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 7月10日投開票の参院選が22日に公示される。選挙戦を前に、事実上の一騎打ちが見込まれる無所属現職の伊波洋一氏と、自民新人、公明推薦の古謝玄太氏の動向を追った。