島しょ県・沖縄の国民保護計画では「県外・県内離島とを結ぶ交通手段は空路と海路に限定される」と強調され、武力紛争発生時の島外避難も海路・空路に頼らざるを得ない。その中で台湾有事の懸念とともに、国民保護強化の必要性も指摘される。戦時中に県関係者を乗せた船舶26隻が米軍に撃沈され、4579人が犠牲になったといわれる。「慰霊の日」を前に、有事の住民避難の現実性を探った。
台湾有事の懸念が渦巻く中、宮古・石垣からの全島避難に数百機の航空機が必要となることが明らかとなった。有事が迫る事態で、大量の航空機を安全に運航できるかは不透明だ。
石垣市のパターンは、全島避難での住民輸送にかかる日数を10日程度と想定する。自衛隊など公的機関のみが輸送する場合は「数カ月を要する」と想定する。同市担当者は「あくまでシミュレーションだ。(本島などへの避難前に)下地島空港を経由するなど柔軟に対応する」と説明した。
県などは海運・航空事業者などを「指定公共機関」とし、輸送力の把握に努めている。県の担当者は「国が業者に輸送を指示する場合も、(ルート明示など)安全確保をした上で実施する」と強調した。
離島周辺で戦闘が展開された場合、避難用の航空機や船舶の安全確保は困難になることが想定される。消防庁は「(武力攻撃の予兆などがある)武力攻撃予測事態でも避難誘導は可能」として、実効性の担保を強調する。県も「予測事態での対応が焦点で、攻撃が始まる前に避難完了する前提だ」とする。
予測事態認定は国が判断する。ただ、武力攻撃前に予測事態を認定することは相手国から「日本側の戦争準備」ととられ、事態をエスカレートさせる可能性もあり、慎重な判断が求められそうだ。
住民の避難誘導などのため、自治体が自衛隊に派遣を要請できる仕組みもある。ただ、防衛省が公開している国民保護計画では、国民保護措置への対応を「主たる任務である我が国に対する武力攻撃の排除措置に支障の生じない範囲」としている。自衛隊が住民避難に船舶・航空機を割けなくなる事態もありうる。
(塚崎昇平)