6月初旬に本島中部であった自民新人の古謝玄太氏(38)=公明推薦=の支部事務所開き。古謝氏に推薦状を手渡す際、ある団体幹部が古謝氏の名前を言い間違う場面があった。幹部は「何て言うの?」と古謝氏に名前を聞き返し、会場に苦笑いが漏れた。
政治経験がなく、総務官僚などとして県外を拠点にしてきた古謝氏は自民党候補者選考で突如名前が浮上し、そのまま自民公認をつかみ取った。ただ、無所属現職の伊波洋一氏(70)には知名度で劣る。さらには、擁立までの過程に不透明さを指摘する声も相まって、全県選挙の活動の核となる保守系地方議員には困惑も広がっていた。
「古謝氏の人柄を知ってもらえば、理解も支持も広がる」(自民県連幹部)。古謝陣営はこれまでよりも始動を早め、3月下旬から各地を行脚し、地方議員らへのあいさつ回りを徹底。衆院小選挙区支部ごとに日程を組み、移動時間を抑えて議員らとの接触機会を増やす工夫も取り入れた。
SNSやネット動画も積極的に活用し「空中戦」にも力を注ぐ。県連幹部は「活動量では伊波氏を圧倒している。若く体力があるからこそできる」と前哨戦での反応に手応えをにじませる。そして自民候補の「お家芸」とも言える「国とのパイプ」のアピールも健在だ。19日には自民党の茂木敏充幹事長が来県。26日には菅義偉前首相も応援に駆け付ける予定で、保守層固めに万全を期す。
知名度に加え、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を「容認」したことも選挙戦の鍵を握る。容認の背景には、昨年の衆院選や今年の4市長選の結果を踏まえた、辺野古新基地建設阻止を掲げる「オール沖縄」の集票力低下がある。
ある自民県連幹部は「辺野古はまだ県民の関心事だ。ただコロナ禍を受け、辺野古よりも経済対策を求める声の方が強い」と断じる。「曖昧にすると相手候補につけ込む隙を与える」(陣営関係者)との判断も働き、容認姿勢を明示する方向にかじを切った。
推薦する公明党の県本部は普天間飛行場の県外・国外移設を掲げる。公明県本関係者は難しい表情を浮かべつつ「ウクライナ情勢もあり、以前よりも反発する声はない」とし、影響は限定的だと見通す。
別の見方もある。自民県連関係者は語る。「古謝氏は全く『白紙』の状態で候補となった。だからこそ各方面に浸透しやすい面もあったが辺野古容認で多少色が付くことになる。それがどう転ぶかは分からない」