県民から公募したメッセージで作成した今回の平和宣言は、紋切り型のように哀悼の意を捧げるだけでなく、平和への思いを強く前に出した点で評価できる。例年のようにウチナーグチや英語を交えたスピーチは、ウクライナのロシア侵攻を意識した、国際社会に対するメッセージにも聞こえた。
スピーチでは基地のない平和な島を望む一方で基地が集中する沖縄の心を、「命どぅ宝」という言葉で強調して伝えていた。「命どぅ宝」は平和の尊さを伝えるときに使う沖縄の黄金言葉(くがにくとぅば)で、沖縄の思いを代表している。私たちは沖縄戦で住民の命が何よりも大切で、その命を守るには戦争をしないこと以外に方法がないことを学んだ。沖縄戦の反省から生まれた大変貴重な教えを引用し、命の尊さについてうまくまとめて宣言したと感じる。
一方で式典は岸田文雄首相の出席に伴う警備が厳重で、非常に物々しい印象を受けた。平和の礎に家族で花を供える方が多数いる傍らで、限られた人しか入れない式典会場は異様な雰囲気を感じた。「なぜ自分は入れないのか」と苦情を言う年配の方も見かけたが、誰のため、何のための式典か。今年に限った話ではないが、式典の主体はあくまでも一般の県民であり、気軽に県民が参加できる式典であってほしい。
(琉球・沖縄史教育)