【深掘り】激戦地土砂採掘、沖縄県が容認した経緯は?与党幹部「ぎりぎりのライン」


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土砂採掘計画の合意案受け入れに関し、記者会見する玉城デニー知事(奥)=24日午後、県庁(小川昌宏撮影)

 糸満市米須の鉱山開発を巡り、玉城デニー知事は24日、総務省の公害等調整委員会(公調委)が提示した採掘事業者との合意案を受け入れた。採掘を認める和解内容に市民団体のほか県議会与党の中からも反発が上がるが、県側は合意案を拒否すれば既に出した措置命令が取り消される公算が大きかったと判断。遺骨混入の防止措置として開発に一定の条件を残すことができたのは評価できるとして、理解を求めていく構えだ。

 辺野古新基地建設の埋め立てに激戦地の土砂が使用されるという指摘に対しても、県政与党幹部は「(合意受け入れは)行政としてのぎりぎりのラインだ。新基地建設自体を止める取り組みが必要だ」と述べる。

 国は軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更申請で本島南部を新たな土砂採取地に追加した。これに対し県は昨年11月に設計変更の申請自体を「不承認」にした。このため県が軟弱地盤の設計変更を承認しない限り、本島南部が新基地建設の採取地となることはない。

 その上で県幹部は「(合意案を)拒否して裁判になっても厳しく、業者から損害賠償請求をされる可能性もある。国が相手の辺野古の裁判とは違う」と、民間の採掘事業と新基地建設の阻止では対応に違いが生じると解説した。

 公調委は当初、事業者との合意案への回答期限を23日に設定していた。県は延期を申し入れて認められ、県民の反発が不可避な「慰霊の日」に和解を表明することは回避した。玉城デニー知事は24日の会見で「われわれが考えている6月23日の重みを、委員会もくんでくれた」と強調した。

 一方で県独自の条例制定などで戦跡公園の保全を図る対策を求める動きもあるが動きは停滞している。県が3月までに設立した遺骨保全条例に向けたワーキングチームも議論の進展はないままだ。ある与党県議は「合意案を受け入れる前に他の手法の検討などが尽くされたか疑問だ」と不満を示した。

(塚崎昇平、安里周悟)