久米島で養殖のサンゴが初産卵 名護では有性生殖の取り組み サウジの石油企業が保全へ2720万円助成


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養殖に取り組んで3年6カ月で、初めて産卵したサンゴ=5月、久米島のサンゴ養殖場所(久米島漁協提供)

 【名護】沖縄県サンゴ礁保全推進協議会(中野義勝会長)は22日、名護市の万国津梁館で「アラムコ沖縄サンゴ礁保全基金サンゴ養殖移植助成事業指導報告会」を開いた。サウジアラビア王国の国営石油・化学企業サウジアラムコの日本法人「アラムコ・アジア・ジャパン」から計20万ドル(約2720万円)の助成を得て、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)とザ・テラスホテルズ(テラス)の共同体と、久米島漁業協同組合の2者がサンゴ種苗の育成、植え付けに取り組むことが発表された。

 OCVBとテラスはシコロサンゴ、エダコモンサンゴの種苗を入手し、3年で300本の種苗を植え付ける。産まれた卵を収集してテトラポットに着床させサンゴを成長させる「有性生殖を活用したサンゴ保全」としてブセナ・海中公園で育成し、年5回のモニタリングで生存率を確認する。

 久米島漁協は2018年秋から開始した有性生殖法で種苗生産されたサンゴ養殖を開始しており、今年5月に初めて産卵を成功させた。22~25年の3年間、アラムコの助成を受け、久米島海域のサンゴ礁を再生させるため幼生供給基地としてのサンゴ養殖を実施するとともに、周辺海域へ移植するサンゴ種苗を生産する。児童、生徒に対するサンゴ苗付け体験などの環境教育も実施する。

有性生殖を活用したサンゴ保全のイメージ図(ザ・テラスホテルズ提供)

 報告会にはサウジアラムコの日本法人アラムコ・アジア・ジャパンのオマール・アル・アムーディ社長、下地芳郎沖縄観光コンベンションビューロー会長、新垣瞳ザ・テラスホテルズ取締役、久米島漁協の田端裕二理事長らが参加した。

 アムーディ氏は「サウジアラビアも沖縄同様、海洋に恵まれている。国際的な中継地として万国津梁の心を大切にし、沖縄の貴重な海洋生物を守る活動を支援できることは光栄だ」と語った。

サンゴ礁保全事業を支援するオマール・アル・アムーディ氏(前列中央)と事業を進める県内関係者=22日、名護市の万国津梁館

 OCVBの下地会長は「サンゴを守り、持続可能な観光と自然を育んでいく」、テラスの新垣取締役は「市民レベルでサンゴ保全に対する理解を深め、行動につながる取り組みを実施していく」、久米島漁協の田端理事長は「基金を有効活用して保全に取り組みたい」とそれぞれ抱負を語った。

 アラムコは災害援助、環境保護や教育などを推進するための支援を全国で実施している。10年12月に、サウジアラムコが日本政府と合意し、うるま市の沖縄石油基地のタンクを借り受けて開始した石油貯蔵プロジェクトで沖縄との関係が深まったことを機に、県サンゴ礁保全推進協議会のサンゴ礁の保全活動支援を開始した。サンゴ礁保全活動支援は11年目。
 (松堂秀樹)