「何を信じれば…」陽性誤通知で訪問看護の現場は混乱 検査業者、サーバー負荷で「人為的ミス」


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感染症対策を講じた事務所で作業にあたる訪問看護ステーションちゅらぐくるの職員ら=22日、与那原町

 医療ケアなどを行う事業所の女性看護師が、新型コロナウイルスのPCR検査の結果、陽性と誤通知を受けた問題で、看護師が勤務する「訪問看護ステーションちゅらぐくる与那原店」の仲里信秀代表は「訪問看護の現場では、ささいなミスも重篤な結果へとつながる。PCR検査結果の信用性が担保されていなければ、コロナ禍の現場で何を信じればいいのか」と唇をかむ。誤った陽性通知を基に約2週間、対応を強いられた。ミスがあっても検査業者が丁寧な対応をとっていれば、看護現場の混乱も最小限にできたと憤る。

 事業所によると、PCR検査の結果はメールのみで通知される。「陽性」のメールを受信した後、検査業者に問い合わせるまでの約2週間、訂正された検査結果は事業所側には伝えられなかったという。

 陽性の誤通知を受け、女性看護師とその家族は自宅待機となり、事業所は訪問看護利用者への説明に追われた。訪問先で看護師はフェースガードやマスクを着用し、感染症対策を講じており、利用者は主治医から濃厚接触者に該当しないと判断された。しかし、利用者は感染で重症化する可能性が高い人たちが多く、その家族にも過度のストレスを与えるなど、誤通知と判明するまで混乱は続いた。

 女性看護師が担当した那覇市の男児=当時(3)=は、重度の疾患がある上、数日後に外科手術を控えていた。看護師が陽性と通知されたため、感染した可能性を考慮して手術は延期に。男児の母は「コロナ禍でなかなか手術日程が決まらず、準備が整ったところだった。裏切られた気持ちで頭が真っ白になった」と話す。事業所のサービス利用を控えたため男児は約2週間、入浴ができず、皮膚からの感染症の危険性もあった。影響を懸念し、男児が受けていたその他の公的サービスも全て利用を自粛したという。

 仲里代表は「互いの信頼関係の下に訪問看護は行われる。誤通知が分かった段階でしかるべき対応があれば、利用者の負担はある程度に抑えられた。ミス発生後の対応を含めた再発防止策を検討してほしい」と訴える。

 誤通知をした検査業者は取材に「検査結果の通知が誤っていたことを事業所側に伝え、訂正と謝罪を行った」と説明。1月中旬はオミクロン株の感染拡大の影響などもあり、一般検査も合わせ、1日5千~6千件の検査を請け負っていた。サーバーなどに負荷が掛かり、システム的な不具合と、集約時の人為的ミスが誤通知の原因だという。

 県に経緯を報告した上で、同社は人の手が介在しないよう集約態勢を見直し、チェックを厳格化し、人員増強をして再発防止に努めているとしている。
 (高辻浩之)