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まだまだ続く炎上被害<伊是名夏子 100センチの視界から>125


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
お気に入りのカフェでのティータイム

 電車に乗れなかった体験を発信し、炎上し、1年以上が過ぎました。しかし今でも毎日、私のことをSNSに書く人がいます。その中でも悲しいことがありました。先日約3年ぶりに用事で渋谷に行き食事をしたのですが、そのレストランで私を見かけたであろう人が、私のことを書いていたのです。真実ではないことも含まれ、私を批判する内容でした。

 炎上被害は深刻です。三つの点が特につらいと感じていて、一つ目は執拗(しつよう)、長期的に付きまとわれることです。1年以上たっても毎日のように私のことが書かれ、ネット上でストーカー被害に遭っているようです。私の場合、車いすを使っているため街中で目立つので、より見つけられやすく、被害が大きくなると感じています。

 二つ目はデマの訂正が難しいことです。デマがどんどん広まり、数が増えると、真実のように見えてしまいます。わざと電車に乗れない状況をつくり狙ってやった、ヘルパー制度を不正利用している、などたくさんの書き込みがあると、信じる人が増えてきます。これはうそである、不正ではない、と言う、私を擁護する書き込みも、デマと同じ量、それ以上にあるといいのですが、到底及びません。思慮深い人ほど、書き込みをためらうことがあるので、軽い気持ちで面白おかしく書かれたデマだけが、世界中に拡散されていくのがつらいです。

 そして「バリアフリーは進んでほしいけど、伊是名のやり方はよくない」のように、一見批判にもとれるような書き方をされ続けることがつらいです。多角的な見方をし、意見を述べているように見えるので、私が悪いのかな、と思い込みそうになるのです。しかしその書き込みの多くは中立を装って、私を攻撃するために書き込まれているのです。強い言葉ではないからこそ受けるダメージの大きいこと。論理的に、対話をしているかのように見えるため、真実をわからない人、障害のある人の生活を想像しにくい人は「伊是名も悪いんでしょう」と思うようになることがあり、悔しいです。

 解決方法がなかなか見つからず、泣き寝入りすることが多いネット炎上被害。裁判には時間もお金もかかり、裁判を起こしたとしても、ネット被害に特化した法律や、人権救済法がない日本では、勝つことは難しいです。それに向けて動いていけたらと思います。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。