【深掘り】玉城知事のコロナ陽性、県政与党に痛手 判明前の行動に物議も


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会見で謝罪する(左から)池田竹州副知事、照屋義実副知事=28日午後、県庁(ジャン松元撮影)

 玉城デニー知事が新型コロナウイルスの陽性となったことで、県や県議会は28日対応に追われ、混乱した。4年間の任期では最後の議会となる6月定例会で、玉城知事が欠席する異例の事態だが、感染経路が親族のため、表面上は「仕方がない」と与野党の多くの議員が受け止める。ただ、知事が政務をこなすことも厳しくなり、10日投開票の参院選への影響も出ており、波紋は広がる。

 一方、27日の県議会一般質問で、玉城知事が25日、沖縄市のライブハウスで開かれたイベントに参加していたことが判明した。玉城知事は「感染症対策はとられていた」と強調しており、県も知事の感染経路ではないとの見方を示す。ただ、マスクなしで、関係者と懇談する様子の写真がネット上に拡散する。県民に対して感染対策を呼び掛ける中で、知事の行動は物議を醸している。

■政局化の動き

 知事が25日に訪れたライブハウスでは、周年イベントが開かれており、約35人の観客がいたという。玉城知事に気付いた関係者がステージに上げ、短時間あいさつした。イベントは数日間にわたって開催されており、20日には桑江朝千夫沖縄市長も登壇してあいさつしたという。

 このライブハウスの関係者は「応援のために駆けつけてくれた。アルコール消毒やカウンターのビニール設置など感染対策を徹底している」と説明した。

 一方、28日に記者会見した赤嶺昇議長は「議会が始まるこの時期に、そもそも、そういう場に行くことはリスクが高い」と知事の姿勢を疑問視する。さらに、親族が陽性となったことを把握した後も、知事が議場で答弁をしていたことを問題視し「県の危機管理体制は崩壊している」(島袋大県議)と野党からは批判も噴出している。

■知事姿勢を疑問視

 「このたびは、県民の皆さま、議会の皆さまに対して、大変ご迷惑、ご心配をお掛けしたことをおわび申し上げる」。28日午後4時過ぎに開いた記者会見で照屋義実、池田竹州両副知事と県幹部は深々と頭を下げた。

 知事が濃厚接触者となったことが判明した27日夜。午後8時30分過ぎに議会日程を終えた県幹部らが、県庁6階の知事室の前で慌ただしく行き来する姿がみられた。28日に知事の陽性が判明した後、県関係者は「正直、厳しい。政務の日程もかなり詰まっていたはずだ」と語った。

 与党関係者によると、玉城知事は県議会一般質問終了後の今週末、参院選で現職の伊波洋一氏を応援するため、各地で演説などに入る日程を組んでいた。陣営関係者は「かなり痛い」と頭を抱える。

 一方、自民新人の古謝玄太氏を応援する自民県連の幹部は、ライブハウスへの訪問などを持ち出し「伊波氏は知事と一心同体だ」(自民県連幹部)と述べ、知事が感染する前の一連の行動を政局化させる動きをみせている。
 (池田哲平、大嶺雅俊、石井恵理菜)