琉球新報と長野県の信濃毎日新聞は29日までに、首里城地下の第32軍司令部壕(32軍壕)と長野市の松代大本営地下壕(松代壕)に関するアンケート結果をまとめた。沖縄と長野両県の県民を対象に認知度などを尋ねた。二つの壕を「保存・活用した方がよい」という回答が全体の84%に上った。保存・活用例として「平和学習での活用」を求める声が最多の48%を占めた。沖縄の人々を犠牲にして本土決戦に備えた国の過ちを後世に伝える場所として、保存・公開を望む声が強く表れた。
32軍壕は沖縄戦を指揮した第32軍司令部が拠点を置いた。松代壕は皇居や政府機関などを移す想定で造られたが、使われなかった。
二つの壕に共通する目的は、天皇を頂点とする国家体制「国体」の護持だった。本土決戦への時間稼ぎのため沖縄は持久戦となり、多くの犠牲が出た。沖縄戦研究者の石原昌家沖縄国際大名誉教授は「人の命を犠牲にして国家を守るのは何の意味もないが、国のリーダーたちはそう考える」と指摘。32軍壕と松代壕の保存・活用を沖縄戦の実態と結びつける意義を強調した。
両県の約8割(沖縄県322人、長野県364人)が二つの壕を「保存・活用した方がよい」と答えた。「保存・活用しなくてもよい」は5%(沖縄県27人、長野県25人)だった。32軍壕について長野県民の46%(206人)が「全く知らない」と回答し、松代壕について沖縄県民の62%(252人)が「全く知らない」と答えた。
沖縄戦のさなかに松代壕の建設が進められていたことを「全く知らない」と回答した長野県民の中には、教科書で「捨て石」となった沖縄戦について触れられていないことを問題視する回答もあった。 (中村万里子)
アンケートは6月8日から16日まで、琉球新報社と信濃毎日新聞が合同で実施し、ウェブ回答を得た。第32軍壕と、長野県の松代大本営地下壕に関する認知度や、保存・活用の在り方など8項目について尋ねた。計1119人から回答があり、居住地の内訳は沖縄403人、長野県445人、その他271人だった。