県内需要、底堅く コロナ後に期待、投資喚起、商業地停滞でも依然高値


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県内最高路線価の那覇市久茂地3丁目の国際通り周辺=6月30日

 県内路線価上昇維持

 国税庁が1日に発表した2022年1月1日現在の路線価では、20年から猛威を振るい続けていた新型コロナウイルス感染症の影響が和らぎ、全国的に回復の兆しが見られた。昨年に続き下落した県もあったものの、多くはマイナス幅が縮小した。沖縄では、コロナ禍で主要産業の観光産業が落ち込む中でも地価は上昇し続けており、需要の底堅さが改めて浮き彫りとなっている。

 沖縄国税事務所が1日に発表した2022年分の県内路線価(1平方メートル当たり)は、対前年度変動率の平均値が1・6%となった。新型コロナウイルス感染症の影響で観光業を中心に県経済が大きな打撃を受ける中でも8年連続で上昇を維持した。“コロナ後”を見据えた、沖縄の潜在的需要の高さを改めて裏付ける結果と言える。

 路線価の評価は今年1月1日現在のもの。県内でオミクロン株の感染拡大が本格化する前で、感染の収束に向けた期待感が高まっていた。21年12月の入域観光客数は前年同月比で29・8%増だったが、コロナ流行前の19年との比較では43・9%の減少だった。経済回復に向けた兆候としては弱いが、収束を期待する社会情勢が投資マインドを喚起したとみられる。

 一方で、県内最高路線価の那覇市久茂地3丁目の国際通りが2年連続で下落したように、那覇市などの商業地を中心に停滞感も漂う。沖縄都市モノレールの駅前路線価を見ても、旭橋、県庁前、牧志の3駅は県都の中心市街地周辺の立地だが、下落となった。

 ただ、コロナ前の旺盛な観光需要を踏まえると収束後の需要復活も十分に想定できることから、売り手は強気の価格設定を崩さない。中心市街地では高額のプロジェクトとなるため、引き合いは強くても成約にはつながりづらいのが現状だ。

 今年に入ってからは感染対策と経済活動を両立させる動きがみられ、那覇空港も国際線の再開が予定されるなど県内経済の先行きには明るい材料も増えている。

 エネルギー・資材価格の高騰やロシアによるウクライナ侵攻、急速な円安による物価上昇などさまざまな懸念も折り重なる。県経済界からはインバウンド(訪日客)需要が回復の鍵との見方も強いが、見通しは依然不透明だ。今後、コロナ禍や物価高の影響が長引けば、インバウンド向けと県民向けなど土地の使われ方によっては上昇と下落で二極化していく可能性もあり、注視が必要となる。
 (小波津智也)

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